2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性色素レチナールの量子過程制御による新規視物質の設計
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
23108709
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤本 和宏 神戸大学, 大学院・システム情報学研究科, 講師 (00511255)
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Keywords | 生物物理 / 量子化学 / 生物・生体工学 / 励起状態 |
Research Abstract |
我々ヒトの色覚を司る錐体視物質の吸収波長調節機構の起源に関する研究を行った。これまでの研究の中で、ハイブリッドQM/MM(量子力学/分子力学)法の使用によるタンパク質環境を含めた計算を行ってきた。その結果、タンパク質環境が色素レチナール上に形成する静電ポテンシャルが錐体視物質の吸収波長調節に大きく寄与していることが分かった。しかしながら、このときのタンパク質環境は分子力学(古典力学)による記述であったため、静電相互作用の大きさを正当に評価できていない可能性が考えられた。そこで、タンパク質環境の量子効果について調べてみた。 大規模なQM領域を丸ごと取り扱うと計算コストが極端に増大してしまい計算不可能となってしまう。そのため、本研究ではSAC-CI法とCIS法でそれぞれ記述する2層のQM領域を用いたONIOM補正法によってタンパク質環境の量子効果を探った。計算の結果、3種類(赤・緑・青)の錐体視物質の全てに対して、従来の計算値よりも励起エネルギーが小さくなることが分かった。これは分子力学では記述できない静電相互作用以外の高次の相互作用の寄与(主にタンパク質の分極効果と電荷移動効果)に因るものである。しかしながら、これらの相互作用は3種類の錐体視物質に対して、どれも同様の大きさの寄与であった。したがって、3種類の錐体視物質の間におけるスペクトルシフトとしての寄与はほとんどないことが分かった。今回の結果により、錐体視物質の吸収波長調節機構の起源は各タンパク質とレチナールとの間に働く静電相互作用の違いである、という前回までの結論をより強めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
励起エネルギー移動の効率を評価する際に必要となる計算手法の開発が終わったこと、及びタンパク質構造情報に関して準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には交付申請書に基づいて来年度も研究を行う予定である。本年度ひとつ問題となったことは、本研究を行う上で従来の計算手法の拡張が必要となったことである。そのため、本年度はその開発に時間を割くこととなった。 計算手法の開発自体は完了したため、今後は簡単なモデル分子を用いて開発し準計算手法の評価に多少時間を取るつもりである。
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Research Products
(6 results)