2011 Fiscal Year Annual Research Report
安定高スピンπ電子系の創出と物性開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
23108717
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鈴木 修一 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (80433291)
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Keywords | 開殻π電子系 / 高スピン分子 / ラジカルカチオン |
Research Abstract |
最近、開殻π電子系分子が、分子性磁石、光電導性、二次電池の活物質等の新たな分子エレクトロニクス材料として注目を浴びている。申請者らは非常に大きな正の交換相互作用(2J>+300K)を有する三重項π電子の合成・単離に成功してきた。これら開発した開殻π電子系を利用することで、スピン情報を制御したエレクトロニクス・スピントロニクス材料となると申請者は考えている。本研究では、これまでの申請者の研究を発展した、(課題1)超強磁性的相互作用を持つ高スピンπ電子系の創成、(課題2)新規トリメチレンメタン型高スピンπ電子系の創成、(課題3)酸化還元による高スピンπ電子系の創成、の研究を行っている。本年度の成果に関して、以下に示す。 課題1に関して、本研究者らが設計した異種ニトロキシド連結体の合成法を鍵としていくつかの基底三重項分子の合成した。置換基を適切に変換することにより、分子内の交換相互作用が2J>+2000Kを有する安定な基底三重項分子の合成、単離、結晶化に成功した。 課題2に関して、ホウ素に二つまたは三つの電子豊富なπ電子系を導入した分子の合成に成功した。さらに、化学酸化することでラジカルカチオン種の合成に成功した。現在、ジラジカルジカチオン種の合成を検討している。 課題3に関して、トリオキシトリフェニルアミンに三つのニトロキシドラジカルを導入した分子において、分子内の交換相互作用が、中性状態での反強磁性的、ラジカルカチオン状態で強磁性的となる新しいスピンスイッチ系の構築に成功した。また、ジヒドロフェナジンに二つのニトロキシドラジカルを導入した系において、そのトリラジカルカチオン体の合成、単離、結晶化に成功した。現在、詳細な物性測定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としている分子の合成、単離、結晶化に成功した。また、磁化率の測定も行い、構造と物性の相関を明らかにすることもできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、設計したいくつかの安定高スピン分子の合成には成功した。一方で、典型元素導入型トリメチレンメタン誘導体の合成に関して、高スピン種の発生に至っていない。ラジカルカチオン種の合成、単離、結晶化には成功しているので、その構造から情報を得て、高スピン種発生に向けた分子の設計、合成を試みる。また、高スピン分子を用いたデバイスを考えている。
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