Research Abstract |
平成23年度は,ねじれたπ空間系(I):2-(1-ナフチル)-2-フェニル-1-メチレンシクロプロパン(1)-トリメチレンメタン型ビラジカル(^32^<・・>*)について検討した.有機ラジカルELの関連実験として,1を含むメチルシクロヘキサンマトリクスへのγ線照射-昇温(77-130K)実験を行い,^32^<・・>*の三重項-三重項蛍光に基づく青緑色の熱ルミネッセンス(TL)の観測に成功した.しかし,この実験には制約が数多くあり,蛍光量子収率(φ_F),蛍光寿命(τ_F)などの光物理データの測定はできなかった.そこで本年度は,ダブルレーザーフラッシュフォトリシス(DLFP)法を採用して,基質1の光誘起電子移動反応による基底状態の^32^<・・>*の発生と,その光励起による^32^<・・>*の発生を達成し,室温・溶液中における^32^<・・>*の発光解析を検討した. ジクロロメタン中,N-メチルキノリニウムテトラフルオロボレートートルエン共増感系で,第一レーザー(Nd:YAG,THG,λ_<EX>=355nm)を照射し,過渡吸収スペクトルを観測したところ,λ_<AB>=385nmに^32^<・・>*の過渡吸収が観測された.そこで,第一レーザー照射の500ns後に第二レーザー(λ_<EX>=355nm)を照射すると,λ_<PL>=470nm付近に発光ピークが観測された.この発光波長は,γ線照射-昇温実験における^32^<・・>*のTL発光波長(λ_<TL>=479nm)に近く,DLFP法によっても^32^<・・>*の発光が観測されていると考えられる.TLとDLFPでは発光スペクトル波形に若干の違いが認められた.本研究ではこれを^32^<・・>*の配座異性体の数とその相対的割合が温度によって異なるためであると考え,参考として^32^<・・>*の配座異性体の密度汎関数理論計算を行った.DLFP法によるφ_F,τ_Fの最終データ得るにはまだ至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成23年度の研究実施計画の項目(1)~(9)であり,それぞれの達成度を総合的に勘案して,上記の様に判断した. 【平成23年度の研究実施計画の項目とその達成度】 平成23年度は系(I)の基質1について,以下の項目(1)~(9)を行い,革新的「有機ラジカルEL」の開発と「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明にあたる. (1)合成⇒予定外であったが,新規合成ルートを開発した. (2)γ線およびX線誘起熱ルミネッセンス⇒ほぼ終了した. (3)ダブルレーザーフラッシュフォトリシス:⇒現在検討中である. (4)量子化学計算⇒ほぼ終了した. (5)置換基効果の評価⇒ほぼ終了した. (6)「有機ラジカルEL」のメリットの考察⇒終了した. (7)「有機ラジカルEL」の開発⇒現在検討中である. (8)「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明⇒ほぼ終了した. (9)総括⇒現在検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度についてもほぼ計画通りに研究を遂行する. 系(I)の基質1について,終了できなかった部分を補い,革新的「有機ラジカルEL」の開発と「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明を終了する. また,系(II)2,5-ジアリール-1,5-ヘキサジエン(3)-6員環1,4-ビラジカル(^14^<・・>*)の基質について,上記の同様な実験を行う.これについては,「有機ラジカルEL」の実現に主眼を置くのではなく,「励起有機πラジカル系の軌道相互作用」の解明を中心に検討を行う.
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