2011 Fiscal Year Annual Research Report
深海熱水噴出孔下に存在する活動的微生物圏の検証
Publicly Offered Research
Project Area | Project TAIGA: Trans-crustal Advection and In-situ biogeochemical processes of Global sub-seafloor Aquifer |
Project/Area Number |
23109701
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳川 勝紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特任研究員 (50599678)
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Keywords | 熱水孔下生命圏 / メタン生成 / 嫌気的メタン酸化 |
Research Abstract |
深海熱水噴出孔から噴き出す高温熱水には海底下から運ばれてきたと考えられる微生物が大量に存在している。その為、熱水噴出孔下には巨大な微生物の「巣」が存在すると期待されている。統合国際深海掘削計画(IODP)による深海底掘削調査航海Exp.331では、中部沖縄トラフ伊平屋北海域の熱水活動域掘削に成功している。本研究では、Exp331航海で取得されたコア試料の微生物解析を通し、深海熱水噴出孔下に広がる活動的な海底下生命圏の存在の証明を目指す。 23年度の解析で、微生物由来DNAと微生物代謝活性が熱水孔下の高温環境中においても検出されることを明らかにすることができた。コア試料から微生物DNAの抽出とPCR増幅に成功し、複数の試料で分子生態学的解析を行うことができた。DNAが検出されたコア試料のうち、最深部にあたる試料は50-90℃の環境であり、そこでは未培養系統群HWCGIV(Hot Water Crenarchaeotic-Group IV)に属する微生物が優占していることが、分子系統学的解析から明らかにされた。その深度ではコア試料1gあたりに1000000細胞の微生物が検出されるが、その数は通常の海底堆積物と比較した場合著しく少ない値である。高温という環境因子が微生物の生息を限定していると予想される。その一方で、放射性同位体トレーサーを用いた活性測定の結果では、メタン生成、嫌気的メタン酸化、酢酸生成といった微生物代謝活性が検出されており、海底熱水によって運ばれるメタン、水素といったガス成分が化学合成微生物の成育を支えているという積極的な証拠を得ることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析試料数が当初の計画より多く、また、微生物バイオマスが少ない為に解析が困難なことから、当初の計画よりやや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
放射性同位体トレーサーを用いた活性測定法に多くの時間を要していたが、分析方法の改善に既に成功しており、今後多くのデータを迅速に出すことが可能となっている。
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