2011 Fiscal Year Annual Research Report
孤発性ALSにおけるRNA編集酵素活性制御異常の分子病態の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
23110503
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郭 伸 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40160981)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) / AMPA受容体 / RNA編集 / ADAR2 / GluR2 / 興奮性神経細胞死 / 運動ニューロン |
Research Abstract |
孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)脊髄運動ニューロンでは,AMPA受容体のサブユニットGluR2に本来行われるべきRNA編集が不充分で、この分子変化はAMPA受容体のCa2+透過性亢進を通じて運動ニューロン死の直接原因であることから、孤発性ALSの病因と密接に関連すると考えられる。GluR2のRNA編集は、adenosine deaminase acting on RNA 2(ADAR2)により特異的に触媒されることから,孤発性ALS運動ニューロンにおけるADAR2活性低下のメカニズムを明らかにすることは病因解明、治療の分子ターゲットの同定のために極めて重要な課題であると考えられる。本研究では患者剖検組織を用いてADAR2活性低下の有無およびメカニズムを検討した。レーザーマイクロディセクターを用いて切り出した単一運動ニューロンの検討から、30例以上の孤発性ALS全例で未編集型GluR2を発現する運動ニューロンが見られ、疾患対照、正常対照では全ての運動ニューロンが編集型GluR2のみを発現していた。ALS運動ニューロンでは3種のADAR酵素の内ADAR2のみ発現量、特異的基質におけるRNA編集率が低下しており、特に未編集型GluR2を発現する運動ニューロンでの低下が著しかった。このことは、孤発性ALS運動ニューロンにおけるGluR2Q/R部位のRNA編集率低下は疾患特異的分子異常であり、選択的なADAR2の発現低下に依り引き起こされることを意味している。本研究により、運動ニューロン死を引き起こす分子異常であるGluR2Q/R部位のRNA編集異常を引き起こす上流の分子変化が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、孤発性ALS運動ニューロンに見られるGluR2のRNA編集率低下の分子メカニズムが、特異的RNA編集酵素ADAR2の選択的発現低下に依ることが明らかになった。また、ALSの大多数を占める孤発性ALSに共通した分子変化であることも明らかになり、病因解明に一歩近づいたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ADAR2発現低下が孤発性ALSの病因に密接に関与することが明らかになり、ADAR2発現の制御機構の解明が孤発性ALSの病因解明、治療の分子ターゲットの同定に繋がると考えられる。ADAR2遺伝子発現調節のメカニズムは未解明であり、プロモーター領域も明らかにされていない。制御機構の全貌を明らかにすることが必須で、時間が掛かるものの、ADAR2の発現に影響を及ぼす物質を探索し、それを用いてプロモーター領域を同定し、レポーターアッセイ系の構築を通じて、ADAR2遺伝子発現制御に関わる分子の同定を行っていく必要がある。
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