2011 Fiscal Year Annual Research Report
ALSの診断と治療のための運動ニューロン変性のメカニズム解明
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
23110504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西頭 英起 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特任研究員 (00332627)
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Keywords | 神経変性疾患 / ALS / 小胞体ストレス / 神経細胞死 / グリア細胞 |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症は、運動ニューロンの選択的変性による。1993年に家族性ALSの原因としてSOD1遺伝子変異が発見されて以来、多くの研究がなされてきたが、未だ孤発性を含む全ALS病態を説明しうるメカニズムの解明には至っておらず、そのため有効な治療法も存在しない。我々は、変異型SOD1に特異的に結合する分子として小胞体膜タンパク質Derlin-1を同定し、この結合により惹起される小胞体ストレスを介した運動ニューロン変性がALS病態に関与することを報告した。その後、現在までに発見されている130種類の変異型SOD1のほとんどがDerlin-1に結合することが明らかとなり、上記分子メカニズムがSOD1遺伝子変異によるALS全てに共通することが示唆されている。さらに、ある種の細胞ストレスにより野生型SOD1もDerlin-1に結合し小胞体ストレスを惹起することを見いだしており、他の家族性・孤発性ALS病態においてもSOD1-Derlin-1結合が関与する可能性がある。従って、小胞体ストレスを介した運動ニューロン変性のメカニズム解明とそれに基づく治療薬は、広くALSの克服に繋がると期待される。一方、変異型SOD1が発揮する細胞毒性は、運動ニューロン自身の細胞自律性経路と、細胞非自律性経路すなわち運動ニューロン-支持細胞(アストロサイトやミクログリア)間あるいは運動ニューロン筋シナプス形成部での細胞間コミュニケーションの両方が、ALS病態発症に関与することが示唆されている。本研究では、これまでの小胞体ストレスに関する知見をALS in vitro・in vivoモデル実験系に応用発展させて、運動ニューロンを取り巻く細胞間コミュニケーションの中でどのようにニューロン毒性が発揮されるかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、H23年度計画として、(1)ALS患者細胞でのSOD1構造変化検出による小胞体ストレスが関与する症例の同定、(2)脊髄培養系を用いての小胞体ストレス応答が関与する細胞種の同定、(3)ALSマウスを用いての小胞体ストレス応答が関与する細胞種の同定、(4)細胞非自律性因子の同定と解析、(5)単鎖型抗体による運動ニューロン変性の中和抑制を目指し、十分な進捗が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、H23年度までに得られた結果をもとに、運動神経細胞死抑制効果を検討するとともに、ALS病態に関わる遺伝子をsiRNAスクリーニングにより実施する。そのための、研究基盤は既に整っている。
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Research Products
(3 results)