2011 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス関連分子の機能解析を促進する新手法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
23110509
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平野 丈夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50181178)
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Keywords | シナプス形成 / シナプス可塑性 / グルタミン酸受容体 / 全反射顕微鏡 / GluD1 / ニューレキシン / ニューロリジン |
Research Abstract |
シナプスの形成と機能にかかわるタンパク質の異常と神経・精神疾患との関係が指摘されているが、シナプス関連タンパク質の異常がいかなる分子過程により、シナプス機能失調を引き起こすかはよくわかっていない。シナプス内外でのタンパク質の動態・分子間相互作用を効率良く解析できる新実験手法の開発は、この問題の解決に大きな寄与をできると考えられる。本研究では、シナプス関連分子の動態とはたらきを調べるための二つの新研究手法の確立をめざしている。一つはガラス面上にシナプス後膜様構造を形成させ、全反射顕微鏡を用いて高シグナル・ノイズ比で蛍光観察を行う実験方法である。もう一つは、神経細胞でシナプス関連タンパク質を発現させて、シナプス後部様構造を人工的に構築し、各タンパク質のはたらきを明らかにする手法である。本年度の前者に関する研究では、ビオチンとアビジンを利用してニューレキシンでガラス面をコートし、その上にEGFP等蛍光タンパク質を融合した受容体を発現させた海馬神経細胞を培養した。そして、ガラス面上のシナプス後膜様構造およびその近傍で、全反射顕微鏡を用いて高シグナル・ノイズ比での蛍光記録を行った。神経細胞で蛍光標識したAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットを発現させて、電場刺激を加えることにより神経活動を亢進して、シナプス可塑性の長期増強を引き起こした。そうしたところ、各タイプのAMPA受容体サブユニットが異なるタイミングと場所でエキソサイトーシスされること等がわかり、長期増強時に各タイプのAMPA受容体が異なる経路を通ってシナプス後膜で増加することが明らかになった。また、後者の研究では、シナプスではたらく細胞接着分子であるGluD1またはニューロリジンを発現させた非神経培養細胞HEK細胞と神経細胞の共培養系において、興奮性および抑制性シナプス様の接合部が形成されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二つの新研究手法の開発をめざしているが、両者で進展があり、各々に関係する論文を発表できた。特に、ガラス面上にシナプス後膜を形成させてその内外でのシナプス関連分子の挙動を調べる研究については、シナプス可塑性である長期増強発現に際してのグルタミン酸受容体の挙動に関して重要な新知見を得ることができ、プレス発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では研究は順調に進んでいる。ガラス面上シナプス後膜内外のタンパク質解析では、記録に成功したエキソサイトーシスに加えて、エンドサイトーシスの記録も行えるようにする予定である。また、非神経細胞を用いてシナプス様構造を形成する研究では、非神経細胞で発現させるタンパク質種を増やし、よりシナプスに似た構造形成を試みる。
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