2011 Fiscal Year Annual Research Report
モノアミン系機能亢進によるグルタミン酸シナプス表現型変化の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
23110519
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
小林 克典 日本医科大学, 医学部, 講師 (10322041)
|
Keywords | 精神疾患 / 病態生理 / 海馬 / シナプス / モノアミン / グルタミン酸 |
Research Abstract |
成体マウスに抗うつ薬フルオキセチン(FLX)を4週間投与して海馬苔状線維シナプスの表現型変化を誘導した。海馬スライス標本に電気生理学的手法を適用し、シナプス表現型変化の有無、及びドーパミン、セロトニンによるシナプス伝達の修飾を検討した。 1.FLXの慢性投与によって生じる、ドーパミンとセロトニンによるシナプス修飾の増強について詳細な解析を行った。中枢セロトニンの枯渇によってFLXの効果は消失したが、5-HT4受容体欠損マウスではドーパミン修飾の増強はほぼ正常に誘導された。オートラジオグラフィによって受容体の発現量を検討したところ、ドーパミンD1様受容体の発現が海馬特異的に上昇していたが、セロトニン5-HT4受容体の発現はむしろ減少傾向が見られた(Kobayashi et al.,2012,Neuropsychopharmacology)。これらモノアミン修飾の増強には受容体発現上昇と下流のcAMPシグナルの増強の両者が関与すると考えられる。 2.cAMP合成を活性化する薬物の投与を検討したところ、FLX投与群とコントロール群で大きな差は見られなかった。従って、cAMP合成酵素の発現上昇やcAMP感受性の変化などはあまり関与しないと考えられる。 3.脳室内にcAMP合成を活性化する薬物を投与したところ、シナプス表現型が変化する傾向が見られた。 4.グリア細胞毒やグリア細胞を活性化する薬物の効果を検討したが、現在までに明らかな効果は見られていない。 5.FLXによるシナプス表現型変化誘導後の海馬歯状回のトランスクリプトーム解析を行った。同様の解析をシナプス表現型変化が抑制されている5-HT4受容体欠損マウスでも行った。これらの解析結果を基にシナプス表現型変化に関与する候補分子を検討している。 6.シナプス表現型変化に対する関与が予想される酵素等の阻害薬の効果の検討を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に実験予定であった、cAMP経路、グリア細胞の関与の解析に着手した。また、トランスクリプトーム解析は終了しており、その次の段階の予備的実験も開始しているので、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き予想される分子機構の検討を行う。阻害薬等の全身投与実験は既に進んでいるので、今後は可能な限り脳室内、海馬内投与を行って薬物の作用部位を限定する。トランスクリプトーム解析の結果等を活用し、シナプス前部位に存在する分子に注目し、シナプス表現型変化の誘導のみならず発現機構の解析を行う。これまでは主に阻害薬の効果の解析を行ってきたが、今後は遺伝子改変マウスを活用する。
|