Publicly Offered Research
申請者はこれまで、700人以上の小児神経疾患患者を対象にアレイCGH解析で網羅的に解析し、そのうち17%において何らかのゲノムコピー数の異常を見出し、中枢神経の発達障害におけるゲノムコピー数異常の意義を明らかにしてきた。これらの中には過去にまったく報告のない新規ゲノム変異も多く含まれ、新規の遺伝子機能を次々と明らかにしてきた。ゲノムコピー数異常が真に中枢神経発達障害に関連していることを証明するためには、ヒトの中枢神経の高度な機能における病態を解析する必要があり、実験動物で証明するには限界がある。そこで本研究では、異常なgenotypeが明らかである疾患患者から樹立したiPS細胞を神経系に分化誘導させ、ゲノム異常を示す遺伝子が細胞にどのように機能不全を起こし、細胞の形態異常やシナプス伝達異常を示すかを免疫染色法や遺伝子発現解析などを使って明らかにすることを目的としている。本年度においては、従来のレトロウイルスによる遺伝子導入による樹立方法以外に、エピソーマルベクターを用いた樹立方法を新たに導入して、いくつかの疾患iPS細胞を樹立した。樹立できたiPS細胞が真に多能性を持っているかどうかを確認し、integrationによるゲノム再構成が起こっていないかどうかを検証し、真に使用するに耐ええる細胞であることを確認した。得られたiPS細胞を浮遊培養後、接着培養させ、神経系に分化誘導し、この誘導過程における遺伝子発現の変化について遺伝子発現解析を行い、特定の疾患では特定の遺伝子群の発現が影響を受けていることを明らかにした。今後はさらにゲノム異常を示す遺伝子がニューロンにどのように機能不全を来たし、細胞のどのような形態異常やあるいはシナプス伝達異常などの生理学的な異常を示すのかを、免疫染色法やCaイメージング法などを使って明らかにする。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
目的の疾患iPS細胞を徐々に樹立している。今後は神経系に分化誘導させ、病態解析に供する。
神経系細胞への分化誘導方法はまだ確立した方法がない。他の研究機関との共同研究により、情報交換を行いながら、研究を推進している。
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