2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイマーモット型分子性導体に内在する特異な電荷自由度の研究
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
23110702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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Keywords | 分子性導体 / ダイマーモット絶縁体 / 電子誘電性 / 電荷自由度 / 誘電率 / 赤外光学スペクトル |
Research Abstract |
本研究の目的は,分子性ダイマーモット絶縁体における分子ダイマー内の電荷自由度に起因する電荷ダイポール生成とその揺らぎによるグラス状態また秩序化により発現する電子的な誘電特性を解明することである.このためκ型分子配列構造をとるBEDT-TTF分子系ダイマーモット絶縁体とその類縁物質の単結晶育成および試料評価を行い,その上で低周波数誘電率測定,赤外光学反射スペクトル測定による電荷ダイナミクスに関する実験研究を行う.平成23年度は,1)スピン液体候補物質であるκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の低周波数誘電応答に対するランダムネスの効果,2)同物質におけるダイマー内電荷自由度に起因すると考えられる特異な電荷励起状態の赤外光学スペクトル測定による検証,3)分子ダイマー内電荷自由度を示唆する他のダイマーモット絶縁体系の探索の3項目に関して研究を行った.成果は次の通りである. 1)κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3に対するエックス線照射による乱れと誘電応答の相関 ダイマー内電荷自由度によるリラクサー的な誘電異常を示す本物質にエックス線照射による分子欠陥を導入することにより電子的な誘電応答から欠陥周りに誘起されると考えられる分極ドメインもしくはクラスター境界からの誘電応答に変遷することを観測した. 2)κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の赤外光学反射スペクトル測定 赤外光学スペクトルの約0.1eVのエネルギーに特徴的なスペクトルウエイトの成長が観測された.明瞭なモットギャップ(ハバードギャップ)が観測されない原因がこのウエイトの成長であることを明らかにした. 3)誘電異常を示すダイマーモット絶縁体の探索 四角格子ダイマーモット絶縁体β'-(BEDT-TTF)_2ICl2に誘電異常を発見し詳細を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エックス線照射による分子欠陥導入による誘電応答の性質の変化が観測され,電子的誘電性が生じている確認がすすんだ.またダイマーモット系の探索により新たな誘電異常を示す物質を発見できた.
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Strategy for Future Research Activity |
物質のバリエーションを増やすことで構造分類学的なアプローチから電子誘電性を検証していくことが重要である.今後さらに候補物質の洗い出しを進める. またκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3に対する当初の研究目的であるスピン液体状態に対する電荷自由度の役割を明らかにする必要がある.このためには中性子散乱や非共鳴エックス線散乱実験などの実行が可能かどうかの検討を専門家と慎重に行う必要がある.
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