2011 Fiscal Year Annual Research Report
2種類の分子配列層をもつ新型有機超伝導体における超伝導発現機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
23110709
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川本 正 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (60323789)
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Keywords | 有機超伝導体 / 結晶構造 / フェルミ面 / 2次元系 / 上部臨界磁場 / 量子振動 / 不整合格子 |
Research Abstract |
1994年に米国で開発された有機超伝導体(BEDT-TTF)_2Ag(CF_3)_4(TCE)には、2K級のκ型と構造が明らかにされていない10K級の物質が報告されていた。16年間未解決問題であった10K級の物質には、T_c=9.5KとTc=11Kの2種類が存在することをX線回折と磁気トルクの実験から明らかにした。米国のグループが発表した構造がT_c=9.5Kの物質であり、本研究で解明した構造がT_c=11Kの物質である。単位胞の大きな物質が高いT_cを有する。また、電荷秩序状態のシートが対称中心を有さない方がT_cが高い結果となった。 白旗・今久保らによって開発された有機超伝導体κ_H-(DMEDO-TSeF)_2[Au(CN)_4](THF)には、結晶学的に異なる2種類の伝導シートが存在する。この物質の上部臨界磁場(H_<C2>)を磁気抵抗により決定した。H_<c2>は2次元的な角度依存性を示し、伝導シートの厚みよりはるかに短い面間コヒーレンス長を有することが明らかになった。また、H_<c2>の温度依存性から見積もられた軌道効果によるH_<c2>の上限とT_cから見積もられるパウリ限界の比から得られるMakiパラメータは、この物質がFFLO相を有する可能性が高いことを示しているが、磁気抵抗からは明確な転移を見出すことは出来なかった。 瀧宮らによって開発された不整合格子系有機超伝導体(MDT-TSF)I_<0.77>Br_<0.52>のラマンスペクトルとX線回折から、ドナー1分子あたりの電荷移動量が0.429価であることを明らかにした。量子振動の測定により、これに対応する波打ったシリンダー状のフェルミ面を見出した。量子振動のビート構造から、大きな伝導シート間相互作用があることを明らかにした。さらに、アニオンの乱れはβ-(BEDT-TTF)_2(I_3)_1-x(Ibr_2)_xのような超伝導転移温度への顕著な影響がないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有機超伝導体(BEDT-TTF)_2Ag(CF_3)_4(TCE)の高T_c相が2種類存在することを明らかにし、それぞれのT_cに対応する結晶構造を同定した。これで、1994年からの未解決問題であった「高T_c相は1つなのか2つなのか」「高T_c相はどのような結晶構造なのか」を完全に解決したことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
有機超伝導体(BEDT-TTF)_2Ag(CF_3)_4(TCE)の高T_c相の超伝導特性を明らかにするための磁気抵抗や磁気トルクの測定を行う。また、フェルミ面の形状を明らかにするための量子振動や角度依存性磁気抵抗の測定も行う。この物質は極めて2次元性の強い電子系であることが結晶構造から推測されているので、他の有機超伝導体とは異なる結果が得られる可能性が高い。
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Research Products
(11 results)