2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ元素の特性を活用した有機超伝導体の電子物性制御
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
23110712
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
今久保 達郎 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (60291332)
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Keywords | 有機導体 / 分子性固体 / 超伝導材料・素子 / 超分子化学 / 合成化学 |
Research Abstract |
本研究では、TTF系有機伝導体に導入するヘテロ元素として、酸素、フッ素、セレンの3元素に着目して新分子の開発をすすめ、分子自体が新しい有機伝導体の新結晶を目指して研究を進めている。今年度は、含フッ素新規ドナー分子としてモノフルオロメチル基を有する新規ドナー分子の合成に成功し、その構造と性質について基礎的情報を得ることが出来た。フッ素は周期表中で電気陰性度が最大の元素であると同時に、原子半径が水素に比較的近いという幾何学的な特徴があり、分子外形の変化を最小限に保ちながら電子的に大きな摂動を与えることが可能である。一方で、フッ素原子を1つずつ選択的に有機分子へ導入することは容易ではなく、まずは合成法の開発から行う必要があった。そこで我々は、TMTSFの原料ユニットの合成法開発の過程で得られた情報を基に、選択的に一つのフッ素原子のみを導入した新しい分子ユニットである、4-fluoromethy1-5-methy1-1,3-dithiole-2-thione(1)の合成を行った。次に、含フッ素ユニット1を用いたいくつかの新規ドナー分子の合成を行い、その合成と構造について検討を行った。分子ユニット1と既知の各種1,3-dithioleユニットとのカップリング反応について、反応条件と分離精製条件を検討・最適化した結果、2-6%の収率で目的物であるTTF誘導体を得ることに成功した。得られた新規含フッ素TTF誘導体については、単結晶X線構造解析により、フルオロメチル基が当初の予想通りの立体配置を保っていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする新分子・新結晶の作成について、収率面あるいは結晶品質の面で多少の改善の必要性はあるものの、ほぼ予定通りの新物質群を入手することに成功しており、最終年度の物性測定に向けて順調にサンプル調製が進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、手持ちのオリジナルユニットである4,5-ethylenedioxy-1,3-diselenole-2-seloneを用いた関連誘導体については、領域内の物理系研究者との連携をとりながら超伝導相の構築原理の発見を目指し、新たに構築中の含フッ素分子TTF系においては、昨年度までに合成ルートの開拓に成功した新規な含フッ素ドナー分子を用いて、新結晶・新超伝導体の発見を目指す。
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