2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイマー系有機導体の電場下顕微分光
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
23110714
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺崎 一郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30227508)
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Keywords | 分子性導体 / 強相関電子系 / 相競合 / 誘電応答 |
Research Abstract |
本研究の目的は,(1)ダイマー系有機導体β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6、κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3に電場を印加することによってその電子状態を空間的に変調し、(2)その不均一構造を可視から赤外領域の顕微分光を用いて調べ、(3)その誘電特性の特徴を明らかにすることである。以下に主な成果を列挙する。 (a)Ca_2RuO_4を参照物質として、光学フォノンと電気伝導を同時計測し、試料温度を光学スペクトルを通じて計測するという手法を確立した。これにより、試料に電場を印加したときに生じるジュール熱の効果を見積もり、適切に試料を冷却することで自己発熱の効果を切り離すことが可能となった。 (b)(a)のテクニックを用いて有機伝導体β-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6の電荷秩序状態を赤外顕微分光を調べた。その結果、この系の電荷秩序相転移はこれまで信じられていたような単純なものではなく、ダイマーモット絶縁相から電荷秩序相への量子相転移とみなせることがわかった。さらに空間赤外イメージを計測することで、この二つの電子相が競合していることがわかった。この結果は、同種のダイマー系有機伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の誘電応答の理解を深めるものである。 (c)さらにβ-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6の非線形伝導状態を調べ、ある条件でkHzオーダーの電流発振が生じることを見出した。これは東工大の森グループがκ-(BEDT-TTF)2I3で見出した現象と極めて類似している。次年度は発振状態における光学スペクトルの計測、誘電率の計測に挑戦する。 (d)β-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6の低温の面内誘電率を計測し、面内誘電率の絶対値の評価法を検討した。得られたデータについては現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に提案したβ-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6の誘電率と光学反射は順調に計測できている。ダイマーモット相と電荷秩序相の競合という予想外の成果もあったが、面内の誘電率に関する定量的な評価は遅れており、全体としてはおおむね順調という自己評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
可視領域でのイメージングや電場中での光学反射の計測を行うこと、また誘電率の測定結果から意味のある面内誘電率の値を決定することが主な方針である。電流発振状態での光学測定に強い関心を持って測定にのぞみたい。
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