2011 Fiscal Year Annual Research Report
巨大負磁気抵抗を発現するフタロシアニン系に基づいた磁場応答分子性強誘電体の構築
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
23110720
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 真生 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (80376649)
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Keywords | フタロシアニン / 負磁気抵抗効果 / 電荷分離 / 強誘電 |
Research Abstract |
軸配位子を持つ鉄フタロシアニン系分子性導電体に見られる巨大な負の磁気抵抗効果は、大きな分子内π-d相互作用と高対称性配位子場による縮退d軌道に加え、一次元電子系を構築するフタロシアニンπ電子の電荷不均化状態が深く関与していることが近年の実験・理論研究の両面から示唆されている。 本研究では、電荷不均化するπ電子と軌道縮退したd電子が強く結合する希有なフタロシアニン系について、分子設計の自由度を最大限に利用し、高対称性配位子場と強いπ-d相互作用を維持しつつ、分子間の二量化を誘起するような分子デザインを施すことにより、磁場応答強誘電特性という新しい電子機能を創出することを目指している。 二量化を誘起するデザインとして、軸配位鉄フタロシアニン系への非対称性導入を試みた。ひとつは2つの軸配位子を異種のものとするアプローチ、もう一つはフタロシアニン配位子への分子就職である。 異種軸配位子の導入において、CN基とCl基、Br基とCl基をもつ鉄フタロシアニンユニットの合成とπ系への電荷注入に成功した。得られた試料の結晶構造はいずれも同種軸配位子系のものと同形であったが、その電気抵抗は、同種配位子系の結晶に比べて2倍程度の活性化エネルギーを持っており、低温での二量化および誘電性の発現に期待を持たせる。 一方、フタロシアニン配位子への非対称として、外周ベンゼン環の一部への置換機導入も試みている。複数の合成ルートから、現在までに、本研究目的に適したものを探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非対称性の導入において、異種軸配位子の導入では、より強い配位子が優先されて導入され、結果として同種軸配位子系のみが生成されることを危惧していたが、作製条件の工夫と発想の転換から早い段階で異種配位子の導入に成功し、電気特性と構造解析にまで至った。フタロシアニン配位子の置換は、当初より初年度中に達成するのは難しいと予想していた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた異種軸配位子系について、低温での電気特性、とくに誘電性に注目した測定を展開する。また、それらの低温での結晶構造解析を行い、二量化発生の有無を確認する。 フタロシアニン配位子への非対称性導入についても、初年度で検討づけた合成ルートから電荷注入試料の結晶作製を行い、結晶構造解析および電気特性評価へとつなげる。
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