2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機ラジカル結晶における分子自由度と磁気相転移
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
23110721
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤田 渉 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50292719)
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Keywords | 有機ラジカル / 分子磁性 / 磁気相転移 / 結晶構造 / ジチオレン錯体 |
Research Abstract |
平成23年度は、分子性磁性物質を対象として構造的ならびに電子的な分子内自由度が連携した磁気現象を探索するために、1,3,2-Dithiazole基を有する有機ラジカルや、金属ジチオレン錯体の合成、構造解析、磁気測定を行った。 1.環状チアジルラジカル誘導体BBDTA・AuBr_4の磁気相転移現象 1,3,2-Dithiazole誘導体BBDTA^+はπ共役系を非局在化した1個の不対電子と+1価の正電荷を有するラジカルカチオンである。本研究では対アニオンとしてAuBr_4^-を有する塩について検討を行った。BBDTA・AuBr_4は二次元正方格子磁気ネットワークを形成しており、44K付近で反強磁性秩序転移またはスピンギャップ転移に似た磁気異常を示す。この物質の基底状態ならびに低温相の構造を明らかにした。 2.新しい金属ジチオレン錯体の合成研究 近年、いくつかの遷移金属ジチオレン錯体において、興味深い電子物性が報告されている。それらの錯体では、配位子に強い分子間相互作用を生じる置換基が含まれているという共通の特徴がある。そこで本研究で強い分子間相互作用を持つことが可能な、新しいジチオレン配位子1,3,2-Dithiazole-4-thione-5-thiolate(dttt_-)を用いて、様々な金属錯体の作成と物性測定を試みた。種々の金属塩(二価金属イオンとしてCu(BF_4)_2、MnCl_2、CoCl_2、NiCl_2、PdCl_2、PtCl_2、三価イオンとしてCrCl_3、FeCl_3、CoCl_3)とを有機溶媒中で混合し、粉末として得た。得られた粉末を二硫化炭素に再溶解させ、蒸発速度をコントロールしたところ、CoとCrの誘導体について単結晶を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていた二次元正方格子磁性体BBDTA・AuBr_4の低温構造解析と、新しいジチオレン配位子の合成と金属錯体の合成に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
二次元正方格子磁性体BBDTA・AuBr_4の低温構造解析には成功したが、物性変化の原因を言及するまでには至っていない。今後、入念に実験の追試をしたいと考えている。また、金属ジチオレン錯体については、目的化合物の合成に成功したものの、有意義な物性の発見までには至っていないため、引き続き様々な金属イオンを用いた錯体の合成を試みる。
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Research Products
(4 results)