2011 Fiscal Year Annual Research Report
時空間的に変遷するGABA_A受容体作用による大脳皮質の層依存的な細胞移動の調節
Publicly Offered Research
Project Area | Cross-talk between moving cells and microenvironment as a basis of emerging order in multicellular systems |
Project/Area Number |
23111510
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
熊田 竜郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00402339)
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Keywords | 細胞移動 / 大脳皮質 / GABA_A受容体 / カルシウム |
Research Abstract |
大脳皮質の発達過程に見られる未熟な神経細胞の移動には内在的なカルシウム振動が重要な役割を果たす。GABA_A受容体は本来抑制性神経伝達物質の受容体として機能するが、発達期においては興奮性に作用し、細胞内へのカルシウム流入を惹起する。本研究課題では発達期の大脳皮質を放射状に移動する神経細胞に対する異なる内在性のGABA_A受容体のアゴニストであるGABAとタウリンの移動経路や場における作用の違いについて検討する。昨年度は両アゴニストの1)細胞外分布を決めるメカニズム、2)GABA_A受容体作用の領域差について検討した。 1)胎仔大脳皮質における細胞外タウリンとGABAの空間的な分布を決めるメカニズムの解明: 特定の場で細胞外GABAの濃度勾配を形成する機序を明らかにするために酵素反応法によるイメージング法を用いた細胞外GABAの空間的分布の可視化を行ったところ、GABA放出部位はGABA細胞の分布とよく一致することが分かった。さらに、このイメージング法を用いて神経伝達物質の放出・分泌あるいは取り込みに関与する分子の阻害剤を用いた薬理学的な検討を行ったところ、胎児期の大脳皮質に存在する細胞外GABAは容量感受性陰イオンチャネルにより供給されること、一方、GABAトランスポーターはGABAを細胞内に取り込むことが明らかになった。 2)胎児大脳皮におけるGABAとタウリンのGABA_A受容体作用の領域差の検討 発達中の大脳皮質の移動経路上にある各領域(中間帯、サブプレート、皮質板)における移動皮質板細胞の細胞外GABAとタウリンの作用の違いについてカルシウムイメージング法により検討した。GABAやタウリンの取り込み阻害剤の投与により人為的に細胞外GABAやタウリン量の増加を引き起こすと、それぞれGABAやタウリンに富む領域で細胞内カルシウム振動の頻度の変化を生じさせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、細胞外GABAの多い「場を形成する」機序と胎生期の大脳皮質における特定の場(領域)におけるタウリンとGABAの移動皮質板細胞への作用(対話)の違いを見出すことができた。これらの所見は申請者らが掲げた目標の中心事項であり、「場の形成」と「移動細胞と場との対話」の解明を目指す研究領域の推進にも寄与したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
外来性のタウリンやGABAによるGABA査受容体シグナルは内在的な細胞内塩化物イオン([Cl-]_i)濃度の変化により正反対の作用(興奮性 or 抑制性)を及ぼすことが知られる。本年度は、GABA_A受容体シグナルを受ける細胞の[Cl-]_iを撹乱した場合における細胞移動への影響について検討する。 皮質凍結損傷による限局的皮質形成異常モデルは、その形成過程において[Cl-]_iを調節するトランスポーターの発現異常をきたす有用なモデルである。このモデル動物を使ってGABA_A受容体シグナルと病態との関連についても検討したい。
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Research Products
(6 results)