2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の集団的移動と接触阻害の分子メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cross-talk between moving cells and microenvironment as a basis of emerging order in multicellular systems |
Project/Area Number |
23111511
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 特任准教授 (20432255)
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Keywords | 集団移動 / 集団浸潤 / 接触阻害 / Girdin / 細胞運動 / がん / 神経芽細胞 |
Research Abstract |
本研究では細胞の集団的移動と接触阻害を制御する分子機序、およびがん細胞において接触阻害が破綻する仕組みを明らかにすることを目的としている。平成23年度は以下の点について明らかにした。 (1)細胞の集団的移動のメカニズムの解明 以前、私達はアクチン結合分子Girdinのノックアウトマウスおよび変異体導入マウス(Basic-mutマウス)において脳室下帯で新生した神経芽細胞の集団的移動(chain migration)が顕著に障害されていることを示した。本年度はその集団的移動のメカニズムを明らかにするため、マウス脳の抽出サンプルを用いてGirdinの結合分子を免疫沈降と質量分析で探索した。野生型のマウスで特異的に検出され、Basic-mutマウスで検出されない分子のうち、現在ダイニンのintermediate chain(以下DIC)について着目し、生化学的検証をすすめている。平成23年度は免疫沈降法を用いてDICとGirdinの結合を確認した。 (2)細胞の接触阻害の制御機構の解明 本プロジェクトについては予想に反して難渋している。計画書どおりNIH3T3細胞において細胞密度依存的に発現が上昇する分子群をDNAマイクロアレイで同定した。そのうちロイシンリッチリピートを細胞外に有するISLR分子について着目して解析をすすめたが、ISLRをノックダウンした細胞と正常の細胞を用いて細胞の接触阻害を評価したところ、明らかな差異を認めることができなかった。 一方で、(1)(2)の実験計画とは別に、以前より機能解析を進めてきたRFP(ret finger protein)が、がん細胞の集団的移動を制御し得る分子であることを見いだし、その機能解析を進めている。RFPは細胞集団の先頭の細胞(leading cell)で特定の分子の発現を制御している可能性があり、現在、その分子機構の解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAマイクロアレイを用いた細胞の接触阻害を制御する分子のスクリーニングについては難渋しているが、細胞の集団的移動の制御メカニズム解明への糸口としてGirdinの新たな結合分子の同定に成功している。さらに当初の研究計画とは異なった経緯ではあるが、RFP分子が細胞の集団的移動、特にがんの集団的浸潤を制御している可能性を明らかにしており、今後さらに解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Girdinとダイニンintermediate chainの結合については、より詳細に結合様式(結合ドメイン)を決定する。具体的には精製タンパク質を用いた結合アッセイと、各種フラグメントの発現コンストラクトを用いた免疫沈降法を予定している。DNAアレイスクリーニングで同定されたISLRについては、細胞の接触阻害機構への関与は否定されたが、組織構築の制御に関わると予想される知見が得られており、今後も解析を継続する予定である。さらにがん細胞の集団的移動を制御するRFPについては、先頭のleading cellにおいて細胞間接着が失われることがRFPによる細胞運動能制御に重要であることが明らかになっており、今後はその分子機構を詳細に検討する予定である。
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