2011 Fiscal Year Annual Research Report
器官形態形成における細胞動態制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cross-talk between moving cells and microenvironment as a basis of emerging order in multicellular systems |
Project/Area Number |
23111525
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
辻 孝 東京理科大学, 総合研究機構, 教授 (50339131)
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Keywords | 歯胚 / 形態形成 / トラッキング / 四次元細胞動態解析 |
Research Abstract |
器官は、上皮・間葉相互作用により時空間的に上皮細胞と間葉細胞の増殖や分化、細胞運動が器官内部の領域ごとに制御され、それぞれの器官固有の形態が形成されると考えられている。本研究課題では、器官の形態形成を制御するパラメーターを、器官発生の三次元的なライブイメージングと個々の細胞の時間軸における動態解析から明確化し、細胞動態が時空間的に統合制御される仕組みとそのパラメーターを制御する分子の実体を明らかにすることにより、ゆらぎ・自由度を内包する個々の細胞が「場」との相互作用を経て、秩序を形成する原理の解明を目指している。 平成23年度では、動的な変化の集積である器官形態形成を解析するため、器官を構成する細胞の三次元的細胞動態を時間軸に従ってタイムラプス解析することにより、器官の動的変化を定量的な情報として取扱い、細胞動態が時空間的に統合制御される仕組みを明らかにすることを目指した。そこでまず、外胚葉性器官である歯をモデルに、歯胚発生における器官形態の変化と三次元的な細胞動態を、時空間的な細胞増殖と共に解析するため、細胞周期の進行をリアルタイムに観察可能なFucciマウスとHuman histone 2B(H2B)を蛍光標識したトランスジェニックマウスを用いて、臼歯歯胚の発生を器官培養下で高感度共焦点レーザー顕微鏡により三次元的に撮影した。その後、器官の動的変化を定量な情報として解析するため、ライブイメージ画像をもとに、細胞の位置情報を取得することにより、コンピューター上で歯胚上皮組織の形態変化と共に、個々の細胞の三次元的な空間配置の変化や細胞分裂、その方向を再現しうる四次元細胞動態解析法を構築した。本解析法により個々の上皮細胞を経時的に追跡し、細胞の移動距離や細胞分裂、細胞分裂の方向を解析したところ、歯胚上皮組織の中央部のエナメルノットでは細胞増殖が強く抑制され、上皮細胞の三次元的配置はほとんど変化しないのに対して、増殖領域では細胞分裂に伴って盛んに細胞が移動する様子が認められた。さらに、陥入・伸長する上皮組織の先端部では、細胞分裂頻度の高い細胞が維持され、伸長に伴って娘細胞を生み出し続け、つり鐘状形態が形成される様子が観察された。 これらの解析により、歯胚発生を再現した四次元モデルを利用することにより、時空間的な細胞動態と器官形態の変化を精密にかつ定量的に解析できることから、数理生物学的な解析と実験生物学的な解析をすることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度目標とした器官発生の四次元的な細胞動態解析法が確立し、歯胚発生をモデルとした上皮細胞の動態解析を進めた結果、器官形態形成に重要な細胞動態を明らかにしている。これらの成果と並行して、すでに外部研究室との共同研究を通した器官形態形成を再現する数理モデルの構築や細胞動態を制御する分子の探索を進めており、数理モデルの基本的な枠組みの構築と細胞増殖を制御する候補分子のスクリーニングが完了した。そのため来年度は、当初の計画に従い、数理モデルの完成度を高めるとともに、細胞増殖を制御する分子を同定し、同定した分子の遺伝子発現を人為的に制御させることにより数理モデルの実験的な検証を進められる段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。研究計画に従って研究を推進する。
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