2011 Fiscal Year Annual Research Report
Wntシグナルは細胞間接着の調節を通して脊索形成での細胞運動を制御する
Publicly Offered Research
Project Area | Cross-talk between moving cells and microenvironment as a basis of emerging order in multicellular systems |
Project/Area Number |
23111528
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
木下 典行 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 准教授 (30300940)
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Keywords | アフリカツメガエル / 原腸形成 / 細胞接着 |
Research Abstract |
動物の体の形作りにおいて原腸形成は発生初期に起きる重要な形態形成運動である。この運動により、中胚葉が外胚葉と内胚葉の間に入りこみ、脊椎動物の基本的な体制である3胚葉構造を作る。アフリカツメガエル胚の原腸形成では、背側中胚葉の細胞が、convergent extension(収斂伸長)という細胞運動を起こすことにより組織が伸長する。この細胞運動には、細胞間の接着の制御が重要である。本研究では、細胞接着分子カドヘリンファミリーの一つ、PAPCの細胞内局在の制御機構を解析した。PAPCファミリータンパク質の細胞内ドメインには進化的に保存されたアミノ酸配列が存在する。この配列中のでも特に保存性の高いセリン残基に注目した。この領域には複数のセリン残基が存在する。これらを一つ一つアラニンに置換したところ、いくつかのセリン残基を置換することで、PAPCの局在が変化することを見いだした。正常なPAPCは細胞膜に局在するが、変異を導入したPAPCは、細胞内の小胞に存在するようになった。このことから、これらのセリン残基がPAPCの局在制御機構に関わっていることが示唆された。 セリン残基はプロテインキナーゼによるリン酸化を受ける可能性があるため、この保存された領域のリン酸化ペプチドに対する抗体を作成した。このリン酸化抗体を用いて、PAPCのリン酸化状態を検討したところ、アフリカツメガエル胚の中でPAPCのこの領域がリン酸化されていることを示す結果を得た。このリン酸化されるセリン周辺のアミノ酸配列を詳細に検討したところ、プロテインキナーゼGSK3βのリン酸化配列のコンセンサスに近い配列が存在することがわかった。そこで、大腸菌で作ったPAPC細胞内ドメインのペプチドを基質としてGSK3βのin vitroリン酸化アッセイを行い、GSK3βがPAPCをリン酸化することができることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PAPCの細胞内ドメインの配列中で、進化的に保存された20アミノ酸残基ほどの領域がある。この領域のなかでも複数あるセリン残基が特によく保存されていた。これらを一つ一つアラニンに置換したところ、いくつかのセリン残基のアラニン置換により、PAPCの局在が変化することを見いだした。正常なPAPCは細胞膜に局在するが、変異を導入したPAPCは、細胞内の小胞に存在するようになった。このことから、これらのセリン残基がPAPCの局在制御機構に関わっていることが示唆された。セリン残基はプロテインキナーゼの基質となる可能性を考えて、そのリン酸化状態を調べるため、保存された領域のリン酸化ペプチドに対する抗体を作成した。このリン酸化抗体を用いたウェスタンブロット法により、PAPCのリン酸化状態を検討した。すると、アフリカツメガエル胚PAPCがこの抗体によりバンドとして検出され、さらに電気泳動前にホスファターゼ処理したサンプルではバンドが消失した。この結果はこの領域がリン酸化されていることを示す。このリン酸化されるセリン周辺のアミノ酸配列を詳細に検討したところ、プロテインキナーゼGSK3βのリン酸化配列のコンセンサスに近い配列が存在することがわかった。そこで、大腸菌で作ったPAPC細胞内ドメインのペプチドを基質としてGSK3βのin vitroリン酸化アッセイを行い、GSK3βがPAPCをリン酸化することができることを証明した。以上の点から、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
PAPCのユビキチン化の意義について解析する。ユビキチン化されたPAPCとされていないPAPCの局在を解析することで、PAPCのポリユビキチン化がPAPCの局在に影響を及ぼすかどうかを検討する。また、ポリユビキチン鎖を形成できない変異ユビキチン遺伝子を発現させることにより、PAPCの細胞膜や細胞内小胞への局在を検討する。また、PAPCの局在が、発生過程、特に原腸形成における細胞間接着や、収斂伸長運動にどのような影響を及ぼすかを調べる。これらのことから、PAPCによるリン酸化とユビキチン化による制御が、原腸形成における組織の細胞運動にどのような役割を果たしていることが明らにしていく計画である。
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Research Products
(1 results)