2011 Fiscal Year Annual Research Report
錯体ホストと高分子ゲストとの空間相互作用を活用した創発機能
Publicly Offered Research
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
23111709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植村 卓史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50346079)
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Keywords | ポリビニルカルバゾール / 多孔性金属錯体 / ホール移動度 / π-スタック |
Research Abstract |
ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVCz)は蛍光性、光導電性を持つ高分子として注目されており、有機ELやメモリーデバイスへの応用など、様々な研究が行われている。通常のバルク状態のPVCzでは、側鎖のスタック構造の乱れ、高分子鎖間の相互作用などがホール移動に大きく影響を及ぼす。そこで、単分子鎖で側鎖のスタック構造が制御されたPVCzが合成できれば、ホール移動度の向上や、詳細な電子物性の評価、新たな機能を引き出すことなどが可能と考えられる。一方、2nm以下の均一な細孔を有する多孔性金属錯体が近年注目を集めている。本研究では、一次元チャネルを有する多孔性金属錯体の細孔内でPVCzを一本鎖状態で合成し、その蛍光挙動や光導電性について検討を行った。 [La(1,3,5-benzenetrisbenzoate)](1)が有する一次元チャネルにN-ビニルカルバゾールと重合開始剤を導入し、窒素雰囲気化、70℃で重合を行った。得られた複合体(1⊃PVCz)の蛍光スペクトルを測定した結果、バルク状態のPVCzに見られる370nm付近のショルダーピークが1⊃PVCzには見られなかった。PVCzはカルバゾール環のスタッキング状態の違いにより370nmにpartial overlap型のエキシマー発光ピークが、420nmにfull overlap型のエキシマー発光ピークが観測されることが知られている。このことより、PVCzは細孔内においてカルバゾール環のfull overlap型が支配的な配置で並んでおり、重なりの大きいπ-スタック構造をとりやすくなっていると考えられる。MDシミュレーションを行った結果、PVCzは細孔内で一本鎖状態で、主鎖は一次元的に配向し、側鎖のカルバゾール環が連続的にπ-スタックした構造をとっていることが示唆された。 1⊃PVCzのホール移動度をTime Resolved Microwave Conductivity(TRMC)法によって測定した。その結果、1⊃PVCzのホール移動度は2×10-2 cm2V-ls-1であることがわかった。一方、バルク状態のPVCzはTRMC法において活性を示さなかった。バルク状態のPVCzでは、ホールが構造的欠陥に起因するトラップサイトに捕獲されており、このような動かないキャリヤーはTRMC法において活性を示さないためである。バルク状態のPVCzのホール移動度は10-7 cm2V-1s-1程度であることが知られており、この値と比較すると、細孔内のPVCzは5桁程度高いホール移動度を示すことがわかった。得られた値はポリチオフェンなどの高い移動度を示すことで知られるπ-共役系高分子の移動度に匹敵する。細孔内のPVCzは、側鎖のカルバゾール環が連続的で重なりの大きいπ-スタック構造をとることでホール移動度が飛躍的に向上したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多孔性錯体の細孔内でビニルカルバゾールのラジカル重合を行うことで、側鎖のカルバゾールユニットが効果的にスタックした構造を達成した。これにより、非常に高いホール移動度が達成され、当初の研究目的に沿って、順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ホスト錯体を変化させることで、細孔内に導入されたポリビニルカルバゾールのコンフォメーション制御を行い、導電性と高分子コンフォメーションとの相関を調べていく。
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