2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の空間制御集積化を基軸とする動的金属錯体ナノシステムの創発
Publicly Offered Research
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
23111711
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平尾 俊一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90116088)
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Keywords | ペプチド / 集積型錯体 / 自己組織化 / 不斉組織体 / 発光特性 |
Research Abstract |
本研究では、高次構造および不斉会合特性を有する生体分子を土台分子として着目し、発光特性や触媒能を有する機能性金属錯体を集積化することにより、本来の機能物質の機能を越えた、または全く別の機能を有する生体分子の空間制御集積化を基軸とする動的金属錯体ナノシステムを創発することを目的とする。本年度は、アニオン性の側鎖を有するポリグルタミン酸(P(Glu))への、カチオン性の異種金属錯体の導入に基づく機能創発金属錯体ナノシステムの開発を行った。 アニオン性の側鎖を有するP(Glu)と、カチオン性錯体であるIr(III)錯体およびRu(II)錯体の静電相互作用に基づく錯形成挙動について、溶媒として超純水を用いて各種スペクトルで検討を行った。P(Glu)存在下での発光スペクトルにおいて、Glu unit:Ir=10:1のスペクトルにおけるIr錯体由来の発光強度が、Glu unit:Ru:Ir=10:1:1のスペクトルにおいては大幅に減少していた。このことから、Ir錯体からRu錯体へのエネルギー移動が示唆されていた。波長800nmにおける励起スペクトルを測定したところ、350nm付近に吸収が存在していた。この吸収が、UV-visスペクトルのIr錯体由来の吸収と重なりを生じていたことから、Ir錯体からRu錯体へのエネルギー移動が誘起されていることが判明した。また、NaCl塩が存在する場合、しない場合の発光スペクトルを比較すると、両者の違いはほとんど見られなかったことから、P(Glu)が効率的な土台分子として機能していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次組織化されたポリペプチドを土台分子とする機能性金属錯体の集積化および機能創発に関する成果を得ることができた。また、研究成果を国内外の学会等で発表を行うとともに、学術誌への投稿が可能となったため、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
π共役系分子からなる有機薄膜太陽電池などの分子デバイスにおいて、その特異的な物性の機能発現は分子配列制御に大きく依存しており、分子配列と配列制御法の確立が緊急の課題とされている。これまでに得られた知見をもとに、高次構造および不斉会合特性を有する生体分子を土台分子として用い、機能性π共役系分子を集積化することにより、本来の機能物質の機能を越えた、または全く別の機能を有する動的π共役系分子システムの開発に取り組む。また、ポリペプチドの右巻きらせん構造を不斉場と考え、不斉反応空間場の開発に関する研究も展開する。
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Research Products
(24 results)