2011 Fiscal Year Annual Research Report
非線形化学振動子のネットワークによる自己組織化の分子制御
Publicly Offered Research
Project Area | Emergent Chemistry of Nano-scale Molecular System |
Project/Area Number |
23111715
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中田 聡 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50217741)
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Keywords | 非線形 / 非平衡 / 自己組織化 / 自律系 / 界面 / 振動現象 / 分岐 / 同調 |
Research Abstract |
本研究では、非線形反応のミクロレベルにおける時空間的相互作用の機構を、分子レベルから「協同現象」の視点で解明することを目的とする。具体的には、複数の化学進行波や自律移動素子の結合によって生じる協同現象の様相に関するスイッチングについて、実験と理論の両面から解明する。 (1)非線形素子の構築と素子間の相互作用によるモード変化 光感受性BZ反応を用いて疎密波の伝播に関する研究を実験と理論の両面から行った。このシステムではリング場に複数個の化学進行波を進行させることができ、初期条件として数と配置を制御することができる。その結果、単純な等間隔への化学波の緩和の途中で疎密波の伝播が発生することを実験的に見出し、数値計算により再現することに成功し、化学反応系における活性因子と抑制因子の時空間的関係を明らかにした。 (2)非線形素子系の様相スイッチング 光BZの数理モデルとしてよく使われるオレゴネーターには、光の効果は振動の抑制項と振動の励起項の両方に含まれており、化学進行波の見られる不均一場においては統一的な見解は得られていないことから、空間勾配又は時間勾配の光照射による、光抑制と光誘起のスイッチングのメカニズムを実験と理論の面で明らかにする研究を行った。その結果、ヌルクラインの緩和プロセスでどちらかが選択されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画で示した内容について、学術論文として掲載することとなったことから順調に進展していると思われる。同調現象や非線形素子の構築については実験系がおおよそ確立し、分子レベルでの相互作用についても分光学的に解明されており、近く論文を投稿する段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形素子の構築にあたって分子膜の拡散の可視化(例えば吸光係数の高い分子の導入)を行っているが、課題もある。また希薄界面測定についても他の分光学的手段を用いてより分子レベルでの制御をおこなうことを進めていく。 非線形応答を示す素子を構築し、分子レベルで制御可能な時空間的に多様な振る舞いを示す実験も得られている。一方で不可逆過程についての物性評価も検討する必要があるとともに、不可逆過程のない物質の合成も行う予定である。
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Research Products
(9 results)