2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規炎症関連因子ANGPTL2による癌の発症・浸潤・転移の分子機構解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
23112516
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
遠藤 元誉 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (40398243)
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Keywords | 発癌 / 慢性炎症 / 癌浸潤・転移 |
Research Abstract |
本研究ではANGPTL2の癌細胞に対する作用機序や癌細胞周囲の微小環境におけるANGPTL2の役割を解明することを目的とした。まず、ANGPTL2によって惹起される慢性炎症が発癌を誘導するメカニズムを解析するために、皮膚にANGPTL2を持続的に高発現するマウス(K14-ANGPTL2 Tgマウス)を用いて、化学的癌誘発剤を用いて皮膚癌モデルを作製した。K14-ANGPTL2 Tgマウスではコントロールマウス(Wild-typeマウス)と比較して皮膚癌の数、大きさとも増強していた。また、K14-ANGPTL2 TgマウスではWild-typeマウスと比較して肺転移が増強していた。K14-ANGPTL2 Tgマウスの皮膚ではWild-typeマウスと比較して、炎症性サイトカインが上昇し、酸化ストレスマーカーの上昇がみられた。一方、無刺激のK14-ANGPTL2 Tgマウスの皮膚では発癌がみられなかった。これらの結果より、ANGPTL2は慢性炎症を介して発癌の感受性を高め、さらに癌細胞の浸潤・転移を促進する因子であることが明らかとなった。次に、ANGPTL2による癌細胞浸潤・転移促進メカニズムを解明するために、ANGPTL2発現ヒト肺癌細胞とコントロール細胞とで、マトリゲル浸潤アッセイを行った。ANGPTL2発現ヒト肺癌細胞はコントロール肺癌細胞と比較して浸潤能が増強しており、ANGPTL2の発現が癌細胞の浸潤能を促進することが明らかとなった。さらに、ANGPTL2発現ヒト肺癌細胞はインテグリンα5β1を介してRacを活性化し細胞の運動能を促進していることを見出した。ANGPTL2は分泌タンパクであり、パラクライン的に作用し血管内皮細胞の遊走能を高め、血管新生を惹起する因子であることを申請者らは明らかにしていたが、本研究により、分泌されたANGPTL2はオートクライン的に癌細胞自身にも働き、癌細胞の浸潤・転移に関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では、ANGPTL2の機能メカニズムを解析することを目的としていたが、現在までにANGPTL2の下流シグナルと癌浸潤・転移との関係が明らかとなり、さらにANGPTL2が発癌に関与することも見出した。ANGPTL2の特異的受容体は未だ見出されていないが、ANGPTL2の誘導メカニズムも含め、さらなる研究を行なっていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果により、ANGPTL2トランスジェニックマウス、培養細胞株を用いた実験において、ANGPTL2が発癌、癌浸潤・転移に関与することを明らかにしてきたが、実際のヒト臨床サンプルにおいて、癌浸潤・転移にどの程度ANGPTL2が関与しているかについては、未だ明らかではない。今後は、ヒト臨床サンプルにおいてANGPTL2と癌浸潤・転移について解析する。さらに、ANGPTL2の機能を抑止する中和抗体あるいは低分子化合物を見出すことができれば、ANGPTL2を標的とした新規癌浸潤・転移抑制治療法開発の基盤研究となる。まずは癌細胞株を用いて、ANGPTL2の機能を抑制できる中和抗体あるいは低分子化合物を見出した後、マウス担癌モデルを用いて、癌浸潤・転移が抑制できるかを検討する。
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Research Products
(4 results)