2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん侵潤を支える細胞外マトリックス環境の形成とその役割
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
23112517
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
宮崎 香 横浜市立大学, 大学院・生命ナノシステム科学研究科, 教授 (70112068)
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Keywords | がん浸潤 / 細胞外マトリックス / ラミニン / EMT / 転移 |
Research Abstract |
がんの浸潤先進部位ではがん細胞と周囲の間質細胞の間の複雑な相互作用により、両者ともに大きな形質変化が誘導される。このようながん微小環境の変化ががんの浸潤性増殖に重要と考えられている。浸潤性がん細胞の特徴的な形態変化として上皮-間葉移行(EMT)が知られている。本研究ではがん細胞のEMTに伴う形質変化と腫瘍間質における細胞外マトリックス(ECM)分子の変化を調べた。3種の上皮性がん細胞にTGF-βでEMTを誘導するとE-カドヘリンやビメンチンなどのEMTマーカーの変動とともに、がん浸潤マーカーであるラミニンγ2鎖(Lmγ2)が誘導された。さらに新規な、最も顕著な変化として、EMT誘導細胞がコラーゲンゲル内で微小管ベースの浸潤突起を形成することを見いだした。In vitroの分析においてLmγ2は血管内皮下へのがん細胞の浸潤を促進した。また微小管突起形成はがん細胞のゲル内浸潤に寄与すると推測される。一方、私たちは以前膀胱がん細胞が分泌する細胞接着分子としてangiomodulin(AGM)/IGFBP-rP1を見いだしている。既に報告しているように、AGMは各種ヒトがん組織の血管で高発現した。今回新たに、がん細胞周囲の線維芽細胞でもAGMの発現が誘導されることが明らかになった。AGMの誘導因子として線維芽細胞ではTGF-β、血管内皮ではVEGFが同定された。AGMは線維芽細胞の増殖やフィプロネクチン産生を促進することによって、腫瘍間質の形成に役立つと考えられた。一方、AGMは血管内皮細胞の細胞接着を促進することによって、恐らく血管新生や血管構造の異常に関係すると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
がん組織におけるangiomodlin(AGM)の発現と機能解析において計画にない結果が得られ、今後新たな展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は上皮性がん細胞にTGF-βでEMTを誘導し、がん細胞の種々の形質変化を明らかにした。次年度は、生体により近いモデル系として、線維芽細胞や炎症細胞とがん細胞の相互作用によるがん細胞の浸潤形質獲得の機構を明らかする。また腫瘍近傍線維芽細胞や内皮細胞で発現するAGMの生理機能と作用機構をより明確にする。
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