2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん微小環境により癌が免疫耐性を新規に獲得する機構の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
23112519
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
竹田 和由 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80272821)
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Keywords | NK細胞 / 樹状細胞 / MHC Class II / tropocytosis / CD4 T細胞 / 免疫抑制 |
Research Abstract |
本研究の目的は、がん微小環境および癌組織内の免疫反応とのクロストークにより、癌細胞が免疫耐性を獲得する新規の変異を起こす分子機構を解明することである。本年度は、固形癌中の免疫担当細胞の解析により見出した興味深いNK細胞分画について報告した。マウスNK細胞はMHC Class IIを発現しえず、樹状細胞とNK細胞の接触は双方の細胞を活性化し、免疫反応全体を活性化するとされている。ところが、マウスに移入した活性化NK細胞の一部はMHC Class IIを発現した。興味深いことに、MHC Class II遺伝子を欠損したNK細胞を活性化後にwild-typeマウスに移入した場合にもNK細胞はMHC Class IIを発現した。また、樹状細胞との協培養によっても活性化NK細胞がMHC Class IIを発現すること等から、活性化NK細胞が樹状細胞との接触により樹状細胞表面のMHC Class IIを奪取しており、この現象はNK細胞レセプター等には依存せず、trogocytosisと呼ばれる機構によることが示された。興味深いことに、CD80,86のような補助刺激分子のNK細胞への移行は最小限で機能的なレベルまで達しないため、MHC Class II-dressed NK細胞は樹状細胞と競合的に作用しCD4T細胞の活性化を抑制した。さらに、MHC Class II-dressed NK細胞の移入は遅延型過敏症による皮膚の腫脹を抑制した。本研究報告により、樹状細胞とNK細胞との接触は免疫を活性化する一方で、MHC Class II-dressed NK細胞を誘導し、樹状細胞によるCD4T細胞の活性化を競合的に抑制し、T細胞依存的免疫反応を抑制するフィードバック効果を発揮している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん微小環境および癌組織内の免疫反応とのクロストークにより癌細胞が免疫耐性を獲得する新規の変異を起こす分子機構の研究を進める過程で偶発的に見出したMHC Class IIを発現するNK細胞の研究を報告したが、これは癌塊内では特殊な免疫細胞が出現し、新たな機能を発揮している可能性を示したものである。この報告でがん微小環境の特異な免疫環境を示すことができたと考えており、今後は癌細胞の変化の解析を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
抗原の明らかな癌を免疫不金マウスに皮下移植した後に抗原特異的CTLを移入する実験や、抗腫瘍免疫反応に重要とされる分子を欠損したマウスに癌を皮下移植する実験系等を用いて、免疫組織染色やreal timePCR、side population等の解析を経時的に行うことで、免疫反応により誘導される癌細胞の変化の解析を進める。免疫耐性分子を癌細胞に発現誘導する免疫反応及びがん微小環境と癌細胞とのクロストークを解明し、免疫回避機構の全貌を明らかにしたい。
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