2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん微小環境における糖鎖を介した細胞接着の役割解明と制御法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
23112520
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
神奈木 玲児 愛知医科大学, 客員教授 (80161389)
|
Keywords | 糖鎖認識分子 / セレクチン / シグレック / 正常型糖鎖 / 組織マクロファージ / ITIMドメイン / COX2 / 消化管粘膜 |
Research Abstract |
我々はこれまで、悪性細胞に発現する糖鎖性の細胞接着分子について、その癌における発現誘導機構と病態生理上の機能を研究してきた。これまではセレクチン・ファミリーの糖鎖認識分子に注目してきたが、その過程で、セレクチンの糖鎖リガンドと近縁な一連の糖鎖が、別の糖鎖認識分子であるシグレック・ファミリーの新規糖鎖リガンドとなっていることを見いだした。シグレック・ファミリーの糖鎖認識分子は、免疫系細胞など広汎な間質細胞と癌細胞との相互作用に関与することから、癌の微小環境ネットワークにおける機能的意義は重大と考えられるので、本研究では、シグレック・ファミリーの糖鎖認識分子とその特異的な糖鎖リガンドの機能の解明に焦点を合わせ、がん微小環境における糖鎖を介した細胞接着の役割解明を研究目的とした。癌細胞に出現する糖鎖の一部は血管内皮細胞の細胞接着分子セレクチンの特異的リガンドであり、癌細胞の血管壁への接着を媒介する。しかし、正常上皮細胞に発現し癌化によって消退する正常型糖鎖の生物学的機能はまだ十分明らかでないので我々はこれを検討した。その結果、正常型糖鎖の一部がシグレックファミリーの糖鎖認識分子、シグレック-7及びシグレック-9の特異的リガンドであることを見いだした。また、この正常上皮細胞の糖鎖リガンドと結合するシグレック-7やシグレック-9を発現する細胞が消化管の粘膜間質に多数存在し、これらが主として組織マクロファージ系統の細胞であることを解明した。シグレックファミリーの糖鎖認識分子はITIMドメインを有し、免疫系細胞の活性化を抑制する機能を持つ。これらのシグレックがマクロファージ系細胞におけるCOX2発現を抑制することを明らかにした。この結果は、正常上皮の糖鎖がCOX2発現抑制作用を持ち、癌化に伴う糖鎖変化によりその抑制作用が失われることを示唆する。以上の成果を原著論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に記載した実験の半分以上を、二年計画の一年目でほぼ完了し、その成果について原著論文を投稿することが出来たので、計画以上の進展と考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果は、上皮細胞の癌化に伴って、シグレック・ファミリーの糖鎖認識分子の糖鎖リガンドを発現する状態から、セレクチン・ファミリーのリガンドを発現する状態へと、上皮細胞の糖鎖発現が変化することを示している。これは主として細胞接着に関連した変化である。今後は、細胞接着に加えて細胞運動能に関連した変化にも焦点を当て、癌化に伴う糖鎖変化の転写誘導機構を解析し、糖鎖正常化治療法の開発の基盤を形成するため、治療手段の開発が昨今進歩しつつある増殖因子を介したシグナル伝達と、糖鎖変化の転写誘導機構との関係を解析する必要があると考えられる。
|