2011 Fiscal Year Annual Research Report
mRNAの再スプライシング現象から探る未知のmRNA品質管理機構
Publicly Offered Research
Project Area | Diversity and asymmetry achieved by RNA program |
Project/Area Number |
23112722
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
前田 明 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (50212204)
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Keywords | 遺伝子 / 遺伝子発現制御 / 癌 / mRNA / スプライシング / 異常スプライシング / mRNA再スプライシング / mRNA品質管理 |
Research Abstract |
『成熟mRNAの再スプライシング』仮説の厳密な証明の概略を説明する(現在、修正論文原稿が審査中)。再スプライシング仮説の最初のスプライシングは通常のスプライシングであり、それによってできあがった成熟mRNAが、癌細胞においてさらにスプライシング(再スプライシング)される、まったく新しい現象を証明した。最初にその現象が発見されたのはTSG101遺伝子であり、その遺伝子のcDNAとGFPの融合発現プラスミドを乳癌細胞に導入し、通常ではスプライシングが起きないはずのイントロンを含まないmRNAにおいても選択的5'及び3'スプライス部位が使われ、内在性TSG101遺伝子由来と同じ異常mRNAができることを確認した。次に、細胞内在性遺伝子からできた成熟TSG101mRNAに再スプライシングが起こっている事実を示すために、乳癌細胞の全RNA標品をRNaseR(3'-5'エクソヌクレアーゼ)処理し、直鎖状RNAを分解したRNA標品を調製した。このRNA標品は、rRNAやmRNA前駆体、mRNAなどの直鎖状RNAがすべて分解されており、またスプライシング反応でしかできない産物といえる投縄状RNAの環状部が完全に保存されていることを以前に証明している[Suzuki et al.(2006).Nucleic Acide Res. 34,e63]。私たちは、このRNA標品を用いてRT-PCRを行い、細胞内在性TSG101遺伝子から通常のスプライシングによって生じる投縄状イントロンと成熟mRNAの再スプライシングに由来するエクソン配列からなる特異的な投縄状RNAを検出した。一方、一段階での異常スプライシングによって生じるイントロン-エクソン-イントロンの構造を持つ巨大投縄状RNAを標的にしたRT-PCR産物は、RNaseR処理後では消失したので、mRNA前駆体由来の産物であることがわかった。以上の実験的事実から、乳癌細胞の内在性TSG101遺伝子から実際に『成熟mRNA再スプライシング』が起こっていると結論した。さらに、mRNA再スプライシング現象が、FHIT遺伝子でも起こっていることを、同様の方法で証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
癌細胞において、TSG101遺伝子から転写されたmRNA前駆体から正常なスプライシングを経て、異常なmRNA再スプライシングが起こる事実は、今までの常識を覆す発見であり、それを厳密に証明することに予想以上の時間を費やした。また投稿論文の審査段階で、他の遺伝子でも実例を挙げるように要求され、FHIT遺伝子もおいて同じ現象を発見したが、その再スプライシングの証明にも、さらに時間を要した。論文は、最初の投稿から1年7ヶ月かかり、現在は別の国際誌において、2度目の修正稿が審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、TSG101とFHITの2つの遺伝子でmRNA再スプライシングの厳密な証明を進めつつ、投縄状RNAライブラリーの作製に時間を費やした。その準備がようやく完了したので、今年度はいよいよ次世代高速シーケンサーによる大規模な配列データの収集と解析を精力的に遂行したい。またmRNA再スプライシングを抑制する因子の探索も平行して行う予定である。幸い、研究を遂行する上での問題点は特にない。
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Research Products
(4 results)