2011 Fiscal Year Annual Research Report
病的細胞の選択的可視化を指向した低酸素応答性蛍光プローブの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Mutli-dimensional fluorescence live imaging of cellular function and molecular activity |
Project/Area Number |
23113508
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田邊 一仁 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40346086)
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Keywords | 低酸素細胞 / レシオ測定 / ルテニウム錯体 / 細胞内酸素濃度 / 分子イメージング |
Research Abstract |
固形がん組織に発生する低酸素細胞は、がん治療上の重要な診断標的として認識され、近年低酸素に応答し、シグナルを発信するさまざまな分子プローブが開発されてきた。しかしながら、既存方法の多くは、低酸素条件で進行する不可逆な化学反応や酵素反応を活用しており、刻々と変化する酸素濃度を追跡できないという問題点が指摘されていた。そこで、本研究では、酸素濃度に応答して可逆的に発光が変化するルテニウム錯体に着目し、酸素濃度のリアルタイムイメージングの可能性を検討した。 ルテニウム錯体はりん光を発し、その発光は酸素により消光されるため、酸素濃度が低い場合に強く発光する。本年度は、低酸素環境の可視化に加えて、酸素濃度の定量を目指し、レシオメトリックな応答を示す低酸素プローブの開発を試みた。配位子に蛍光団クマリンを含むルテニウム錯体(Ru-Cou)を合成し、その発光挙動を調べたところ、490nm付近にクマリン由来の蛍光と600nm付近にルテニウム錯体由来のりん光が観測された。続いて、酸素濃度を下げると、蛍光強度は変化しなかったが、りん光強度は増大した。また、酸素濃度を繰り返し増減したところ、蛍光は常に強度が一定であったが、りん光強度は可逆的に増減した。さらに、Ru-Couにアルキル基を導入した誘導体をA549細胞に投与したところ、低酸素細胞内でのみ強いりん光を発することを確認した。一方、酸素濃度に拘らず蛍光はほぼ一定の強度であった。 以上のように、Ru-Couはレシオメトリックな応答を示す優れた低酸素プローブであることが確認できた。次年度は、本プローブの生化学的な手法を用いた機能評価を進め、生体での低酸素イメージングへ応用していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、平成23年度に両親媒性化合物の設計と化学的手法による機能評価を終え、平成24年度に細胞や動物を用いた機能評価を進める予定であった。平成23年度はRu-Couの合成と評価を終えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に合成と化学的な手法による性能評価を終えたプローブから順に、生きた細胞を用いて機能評価を行なう。生体細胞に各プローブを投与した後、低酸素下あるいは有酸素下で培養し、シグナル発信を蛍光顕微鏡によって確認する。得られた知見を再度分子デザインにフィードバックし、システムの最適化を図る。また、細胞実験で優れた機能を示した蛍光プローブについては、がんを担持した実験用小動物(マウス等)を用いたin vivoでの評価実験を進める。
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