2011 Fiscal Year Annual Research Report
多角的蛍光イメージングによる嗅覚神経回路の機能構築原理の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Mutli-dimensional fluorescence live imaging of cellular function and molecular activity |
Project/Area Number |
23113520
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 副チームリーダー (70332335)
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Keywords | 嗅覚 / 神経回路 / 脳 / 行動 / 遺伝子工学 / 蛍光タンパク質 / 可視化 / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
嗅覚は多くの動物にとって、食物の探索、危険の察知、社会性コミュニケーションや繁殖など、個体の生存と種の維持に関わる重要な感覚システムである。匂いの源から発せられた「匂い分子」は、鼻の奥にある感覚ニューロンによって受け取られ、その情報は匂い分子の化学構造を基にした「匂い地図」として脳の嗅球(一次嗅覚中枢)に投影される。また、動物が匂いの種類に応じて様々な行動を出力するためには、高次中枢が嗅球の匂い地図を適切に読み取る必要がある。しかしながら、嗅球から高次中枢に至る二次嗅覚経路の神経接続様式および匂い情報処理様式はほとんど解明されていない。本研究では、これまでに確立した神経回路の可視化技術をさらに発展させ、多角的蛍光イメージングによりこの問題にアプローチする。我々はこれまでに、蛍光タンパク質のモザイク発現により、稚魚の嗅球ニューロンを単一細胞レベルの解像度で可視化することに成功している。本研究ではこの手法をさらに発展させ、成魚において少数の嗅球ニューロン集団を蛍光タンパク質で多色刷りする系の構築を開始した。まず稚魚の一過性発現系において、Gal4/UASとCre/loxPシステムを組み合わせた蛍光タンパク質発現系(UAS : Brainbow)の有効性を確認した。さらに成魚での発現維持を目的として、UAS : Brainbowトランスジェニック系統を樹立した。また神経接続様式の解明には、シナプス結合特異性の解析も必須である。そこで、膜局在型splitGFPによるシナプス結合可視化システムの確立に向けて、splitGFP相補フラグメントを嗅覚系で発現させる導入遺伝子を構築した。一方、匂い情報伝達様式を機能的な側面から理解するために、神経活動レポーターGCaMPを発現するトランスジェニック系統を樹立し、各種匂い刺激に対する嗅球の応答性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究計画にほぼ沿って進展している。神経軸索の多色刷りや神経活動モニタリングのためのトランスジェニック系統を樹立し、次年度の詳細な解析の準備が整った。シナプス形成の可視化については、従来法の原理を基に大きな改良を加えているため、トランスジェニック系統の樹立には至っていない。しかしながら、系統樹立のための導入遺伝子構築がほぼ完了し、一過性発現によるシステム検証の段階に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られたトランスジェニック系統を用いて、嗅球から高次中枢への包括的軸索マップの作製と、匂い刺激および嗅覚行動にリンクした神経活動マップを作製する。シナプス形成の可視化については、研究計画にある「嗅球-高次中枢」回路への適用に先立って、改良したシステムの妥当性の評価を行う。具体的には、ニューロンタイプとシナプス形成部位がすでによく知られている「嗅上皮-嗅球」回路での検証を行う。これらの多角的蛍光イメージングによる神経解剖学的・機能的解析を進め、嗅覚神経回路の機能構築原理の解明を目指す。
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