2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜の非対称性を制御するP4-ATPaseのメンブレントラフィックにおける役割
Publicly Offered Research
Project Area | Intracellular logistics: interdisciplinary approaches to pathophysiology of membrane traffic |
Project/Area Number |
23113714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
申 惠媛 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10345598)
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Keywords | メンブレントラフィック / 脂質二重層 / 脂質非対称性 / リン脂質 / P4-ATPase |
Research Abstract |
脂質二重層の脂質非対称性の調節は、メンブレントラフィック、細胞運動、神経突起形成など様々な生理活性に必要であるが、その分子機構はほとんどわかっていない。本研究では、脂質二重層の時空間的な脂質の組成変化をもたらすP4-ATPase(flippase)のメンブレントラフィックにおける調節機構を明らかにすることを目的とした。 ヒトのすべてのP4-ATPaseをクローニングし細胞内局在を明らかにし、P4-ATPaseの局在にはシャペロン様のタンパク質であるCDC50が必要であることを明らかにした。そのうち、ゴルジ体に局在するP4-ATPase(ATP9B)に注目し、その局在にCDC50を必要としないことを明らかにした。また、ゴルジ体への局在に必要な領域を明らかにした。ATP9Bの結合タンパク質を同定した結果、膜を変形させるタンパク質やコートタンパク質などのメンブレントラフィックに関与するタンパク質を同定した。ATP9Bとこれらのタンパク質の相互作用および機能を解析中である。 P4-ATPaseの基質であるホスファチジルセリンがエンドソームに富んでいることから、エンドソームに局在するP4-ATPaseにも注目した。これらをRNAi法を用いて発現抑制する方法を確立した。このP4-ATPaseを発現抑制するとエンドソームから細胞膜への輸送経路が阻害されることが分かった。現在、他の輸送経路への関与を検討中である。 P4-ATPaseのflippaseの活性を測定するアッセイ系を確立した。細胞膜に存在するすべてのP4-ATPaseの活性および基質特異性を決定するため、ウイルスを用いた安定発現株を樹立した。順次そのflip活性を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、酵母ではP4-ATPaseがメンブレントラフィックに関与する報告があったが、ヒトでは全く不明であった。内在性のP4-ATPaseを検出する抗体の作製はできなかったが、一過性の発現や安定発現株を用いてその細胞内局在を決定した。さらに、エンドソームに局在するP4-ATPaseがエンドソームから細胞膜への輸送に関与することつまりメンブレントラフィックに関与することを見出したのは大きな進展である。一方、ゴルジ体に局在するP4-ATPaseの結合タンパク質の同定にも成功している。また、哺乳類の細胞においてP4-ATPaseの酵素活性の測定法の確立に成功したので、今後遺伝病の原因のP4-ATPaseを含むヒトのP4-ATPaseの酵素活性および基質を決定することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
エンドソームに局在するP4-ATPaseのリサイクリング経路における機能解析を推進し、エンドソームに富んでいるホスファチジルセリンのflipが輸送経路にどのように関わっているかを明らかにしていく。 ゴルジ体に局在するP4-ATPaseと膜を変形するタンパク質の相互作用の解析し、ゴルジ体からの輸送経路におけるリン脂質の組成変化と膜変形の協調的機構を明らかにしていく。 遺伝性胆汁うっ滞症の原因であるP4-ATPaseを含む細胞膜のP4-ATPaseのflip活性とその基質特異性を決定し、遺伝病の病態機構の解明に迫る。
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Research Products
(12 results)