2011 Fiscal Year Annual Research Report
ESCRT-IIIタンパク質によるミトコンドリア分解の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Intracellular logistics: interdisciplinary approaches to pathophysiology of membrane traffic |
Project/Area Number |
23113717
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 浩二 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授 (40455217)
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Keywords | ミトコンドリア / オルガネラ動態 / 細胞内分解 / 膜輸送 / 出芽酵母 |
Research Abstract |
【平成23年度】ESCRT-III欠損細胞の表現型解析 ミトコンドリア分解は、酵母からヒトまで保存された選択的オートファジーの一種であり、ミトコンドリアの量や品質を管理する役割を果たしていると考えられている。このミトコンドリアを特異的に丸ごと分別・除去する機構は「マイトファジー」と呼ばれ、多数のタンパク質が関与する。それらの中には、膜輸送の主要な経路の一つであるMVB(multivesicular body)sortingに必須なESCRT-III複合体の構成タンパク質が含まれている。これまでの研究で、ESCRT-IIIタンパク質の欠損によりマイトファジーは強く抑制されるものの、栄養飢餓誘導型の非選択的オートファジーやCvt経路(一部の液胞内酵素を細胞質から液胞へ輸送する選択的オートファジー)は影響を受けないことを、研究室で使用している細胞株を用いて遺伝子欠損変異体を作製し、再現性を確認した。 マイトファジーを誘導するためには、酵母細胞を非発酵性の培地で増殖させ、細胞が静止期に入るまで培養する。すなわち、マイトファジーの誘導には細胞の呼吸能が必須であるが、ESCRT-IIIタンパク質欠損変異体においても、増殖が若干遅くなるものの、呼吸増殖して静止期に入ることがわかった。 Atg32は呼吸増殖条件下で発現が誘導され、ミトコンドリア外膜に局在し、オートファゴソーム膜の形成に必須なAtg8およびAtg11と相互作用する、マイトファジーに必須なタンパク質である。Atg32の発現誘導がマイトファジーに重要であることから、ESCRT-IIIタンパク質欠損変異体においてAtg32のタンパク質レベルを調べた結果、野生型細胞と比較して有為な違いは見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ESCRT-III欠損細胞のマイトファジーにおける表現型の再現性や特異性を確認することができ、今後の解析をマイトファジー関連タンパク質やESCRT-IIIの機能に焦点を絞ってゆく。ESCRTタンパク質に関しては、細胞分裂やウイルスの出芽といったMVB sorting以外のプロセスへの関与が明らかになっており、どのESCRTタンパク質がミトコンドリア分解のどの過程に働いているかが今後の課題である。以上、ESCRT-IIIタンパク質の新たな細胞内機能について、分子レベルでの知見が期待されることから、研究課題全体としては、当初の実験計画には完全に一致していないものの、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的な実験結果であるが、ESCRTタンパク質の欠損変異株を網羅的に解析しており、4つの機能グループ(0,I,II,III)にクラス分けされる17個のESCRTタンパク質と2個の関連タンパク質の欠損細胞でマイトファジーを調べた。その結果、個々の欠損細胞でマイトファジーの効率が異なっており、ESCRT-IIIだけではなく、他のESCRTタンパク質もマイトファジーに関与していることが考えられる。また、GFPを付加した融合タンパク質の蛍光顕微鏡観察により、ESCRT-IIIタンパク質であるSnf7の細胞内局在を調べたところ、マイトファジー条件下でドットの形成が見られ、それらの一部がミトコンドリアと重なっていると思われる。今後は他の解析手法を用いて、ESCRTタンパク質の細胞内動態を明らかにしてゆく。
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Research Products
(14 results)