2011 Fiscal Year Annual Research Report
LIS1による細胞内ロジスティックスと滑脳症発症の関係
Publicly Offered Research
Project Area | Intracellular logistics: interdisciplinary approaches to pathophysiology of membrane traffic |
Project/Area Number |
23113723
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山田 雅巳 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (10322851)
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Keywords | 細胞内ロジスティクス / 微小管モータータンパク質 / LIS1 / 細胞質ダイニン / 低分子量GTPase Rab6 / 神経遊走 / 滑脳症 / カルパイン阻害薬 |
Research Abstract |
本研究課題は、滑脳症原因遺伝子LIS1の機能不全による「細胞内物流の撹乱・破綻」に起因する「神経細胞遊走の欠如」の観点から滑脳症発症メカニズムを解明することを目標とし、まずは、私たちが提唱してきた順向性LIS1・細胞質ダイニン複合体の神経細胞終末での再編成の分子制御メカニズムを明らかにすることを試みた。これまでの私たちの研究成果から、細胞質ダイニンは、順向性と逆向性に運搬される際に異なる複合体を形成しており、LIS1が神経終末での細胞質ダイニン複合体の再編成の際、輸送基質(Cargo)の微小管へのloading/reloadingの分子制御機構において重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究課題(平成23年度)に於いては、これまでに私たちが確立したin vitro蛍光標識微小管Gliding Assayによるスクリーニングの結果、低分量GTPase Rab6をLIS1・細胞質ダイニン複合体の再編成過程を制御している候補因子として同定することができた。そこで本年度中に、低分量GTPase Rab6の神経細胞内での機能的役割をin vivoの実験系で評価したいと考え、蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy : FCCS)、蛍光1分子イメージング法を用いて、(新生)マウス由来の後根神経節細胞内の微小管上を輸送される微小管モーター分子あるいは輸送基質(Cargo)を直接観察して細胞内物流あるいは分子間スイッチを評価できるシステムを確立した。この解析システムにより、細胞質ダイニンと活性型低分量GTPase Rab6が神経細胞終末領域の微小管上での逆行性輸送に於いて挙動を共にしていること、また、LIS1・細胞質ダイニン複合体は、神経細胞内に於いては、順向性輸送に於いてのみ挙動を共にしていることが観察された。これらのことより、LIS1は、キネシンの輸送基質(Cargo)として細胞質ダイニンを微小管のプラス端へ、つまり神経終末までリサイクル輸送させた後、活性型低分量GTPase Rab6がその順向性細胞質ダイニン複合体を再編成させて、細胞質ダイニン自身が微小管モーター分子として働く逆向性輸送複合体を形成するという新しい微小管モータータンパク質の分子制御メカニズムが
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は、滑脳症原因遺伝子LIS1による微小管モーター分子による細胞内物流の制御メカニズムを分子レベルで明らかにすることである。本年度は、その分子制御メカニズムに関与する重要な因子低分子量GTPase Rab6を同定することができた。さらには、神経細胞内に於ける微小管モーター分子およびその関連因子を蛍光イメージングにより直接観察あるいは分子間相互作用を調べるin vivo実験系を確立することができた.これらの経緯より、当初の実験計画は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度立ち上げた蛍光イメージングによるin vivo微小管モーター分子の解析システムをより正確な情報を得ることができる様に改良する。また、今回実験系の立ち上げとして神経終末領域に於ける微小管モーター分子に着目したが、神経細胞遊走の際の微小管による核の牽引の仕組みを明らかにする為には、中心体付近でのLIS1・細胞質ダイニンを含む微小管モーター分子の輸送複合体が再編成される過程を明らかにすることが重要であると考えている。この際のLIS1の機能的役割あるいは新規関連分子の同定も含めて、神経細胞内に於ける細胞内物流の破綻、神経細胞遊走の欠如の観点から、滑脳症発症メカニズムの解明に繋げたい。
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