2012 Fiscal Year Annual Research Report
分泌性シグナルタンパク質の細胞内輸送機構とその破綻による疾患の発症機序の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Intracellular logistics: interdisciplinary approaches to pathophysiology of membrane traffic |
Project/Area Number |
23113730
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
高田 慎治 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎総合バイオサイエンスセンター, 教授 (60206753)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 発生・分化 / 遺伝子 |
Research Abstract |
本年度は以下の2点についての研究を行った。 1Porcの機能を阻害したゼブラフィッシュ胚の解析 Wntの種類ごとのPorcの影響の違いを検討するため、原腸陥入運動に関わるWnt5と神経管の発生に関わるWnt-3aに着目し、GFP-Wnt5とGFP-Wnt3aの各々をPorcMOとともにゼブラフィッシュ受精卵に顕微注入し、その各々の分泌が阻害されているかどうかを同一組織で観察した。その結果、胞胚期の外胚葉において、GFP-Wnt5の局在はPorc MOにより大きく変化し、主に細胞内に蓄積されたのに対し、GFP-Wnt3aの局在には大きな変化は認められず、細胞間にドット状に存在していた。したがって、少なくとも胞胚期の外胚葉においては、Porcの要求性がWntの種類によって異なることが明らかとなった。 2さまざまな培養細胞を用いたPorc機能の比較 研究代表者はマウスL細胞を用いて、マウスWnt3aの209番目のセリン残基にパルミトレイン酸がPorcによって付加されることを示しているが、このセリンをアラニンに置換したWnt3a(Wnt3a-S209A)はL細胞やゼブラフィッシュやアフリカツメガエルの初期胚では細胞外に分泌されなくなるのに対し、ショウジョウバエS2細胞などではこの置換体は正常に分泌される。そこで、さまざまなほ乳類の培養細胞を用いてPorcの作用に細胞特異性があるのかどうかを検討した。その結果、マウスL細胞以外の複数の培養細胞において、Porcの機能阻害によりWnt3aとWnt5aの分泌が阻害されること、しかもその際にWnt5aの分泌がより強く抑制されることが明らかになった。したがって、Porcによる脂肪酸修飾はWntの分泌にとって広く必要であり、しかもWntの種類ごとに必要量が異なるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初に「研究の目的」として、ゼブラフィッシュ胚を用いたWntの分泌に対するPorcの必要性の検討とさまざまな培養細胞におけるWnt分泌に対するPorc機能の解明を掲げたが、前者に対してはWntの種類ごとにPorcの必要性に違いがあること、後者に対しては複数種の培養細胞においてPorcがWnt分泌に必要であることが明らかにでき、前者については計画の60%、後者については100%の達成ができたものと判断できる。なお、年度途中に別の新学術領域研究が採択され、重複制限の規定により本研究費補助金を年度途中で辞退することになったため、前者に関する残りの40%分の研究については結論を得るに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今年度をもって終了するが、ここで得られた成果をもとに発生過程や幹細胞ニッチにおけるWntタンパク質の分泌制御に関する研究を推進する予定である。
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