2011 Fiscal Year Annual Research Report
胃がんおよび大腸がんの発症における細胞質病原体センサー蛋白の役割の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Conversion of tumor-regulation vector to intercept oncogenic spiral accelerated by infection and inflammation |
Project/Area Number |
23114505
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
今村 龍 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (10311680)
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Keywords | NLRファミリー蛋白 / PYNOD / 胃がん / 大腸がん |
Research Abstract |
胃がんや大腸がんは、その発症において感染細菌や常在細菌と宿主の相互作用が重要である。一方、NLR蛋白は、細胞膜のTLR蛋白と同様に、病原微生物を認識し、炎症応答を惹起する細胞質センサーである。NLR蛋白はアダプター蛋白質ASCを介してカスパーゼ1を活性化し、IL-1βやIL-18などの炎症性サイトカインの成熟と分泌を誘導する。申請者らは、自ら発見したNLR蛋白のPYNODがASCやカスパーゼ1の機能を、逆に阻害することを示してきた。胃がんの発生においては、Wntシグナル亢進およびプロスタグランディンE2産生が重要と考えられている。これら双方のシグナルを活性化したマウスモデルであるWnt-1,Cox-2,mPGES-1を同時に発現させたトランスジェニックマウス(K19-Wnt1/C2mE、Gan マウス)は高頻度に胃がんの発生が認められる。これらのトランスジェニックマウスにおけるNLR蛋白の発現をマイクロアレイで解析したところ、PYNODの発現がC2mEマウス(炎症誘導マウス)およびGanマウス(胃がん発症マウス)で著明に上昇していることを発見した。現在この胃がん発生モデルマウスとASC、カスパーゼ1、PYNOD各欠損マウスおよびPYNODトランスジェニックマウスとの交配を行い、さらなる遺伝子改変マウスを作製中である。さらにヒトの胃がん患者の検体を用いて定量PCRによりPYNODの発現を検討したところ、ある種の胃がん病変部におけるPYNODの発現が上昇していることを見い出した。現在症例数を増やして確認中である。また大腸がんのモデルとしてDSSおよびアゾキシメタン投与実験を行っているが、DSS投与後のPYNOD発現は変化しなかった。現在までのところDSS投与後、過度の炎症によって誘導される体重減少は、PYNODトランスジェニックおよび欠損マウスいずれも野性型と同様であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症誘導マウスおよび胃がん発症マウスにおいて、抗炎症作用を持つPYNOD分子の発現が増強していることを発見した。NLRファミリー分子の中でも唯一、PYNODだけの発現増強が見られることは大変興味深いと考えられる。またヒトの胃がんでもPYNODの発現が上昇している結果を得ており、ヒト疾患への応用も考えられる。一方、PYNOD遺伝子改変マウスと胃がんモデルマウスとの交配にかなりの時間を費やしてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
胃がん発症モデルマウスにおいて、PYNODが欠損している状態(PYNOD欠損マウスとの交配)、あるいは最初からPYNODの発現が増強している状態で(PYNODトランスジェニックマウスとの交配)、炎症から発がんにいたるプロセスはどう変化するのかを解析し、PYNODの発現が胃がんで増強している生理的/病理的意義に迫る。また各遺伝子改変マウスを用いてDSS+AOM投与による大腸がんモデルも検討する
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Research Products
(7 results)