2011 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン-核膜インターフェース複合体による核の構造・機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
23114705
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩渕 万里 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (40275350)
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Keywords | 生体分子 / 発生・分化 / 初期胚 / 核膜 / クロマチン |
Research Abstract |
ツメガエル初期胚の細胞核は、クロマチンと核膜の結合が緩やかであるという構造的特徴を持つ。本研究は、ラミン、核内膜タンパク質、クロマチンタンパク質からなる複合体(核インターフェース)の構成分子に着目し、初期胚型の核構造の構築に関わる分子の同定を行い、核インターフェースが細胞分化の制御に果たす役割を明らかにすることを目的とする。そのため、分子の量的操作と核構造の対応付けが可能である卵無細胞系を用いて、まず核内膜タンパク質が初期胚型の核の構造構築に関与するか調べた。ツメガエル初期胚における核内膜タンパク質の構成には不明な点が多いことから、特異抗体を作製し、卵や初期胚、および分化後の胚における核内膜タンパク質の発現レベルを調べた。その結果、lamin B receptor(LBR)およびMAN1の発現レベルが受精卵では非常に少ないことが明らかとなった。また、LAP2βの初期胚型バリアントであるLAP2ωが初期胚における主要な核内膜タンパク質であることがわかった。次に、初期胚に発現の少ない核内膜タンパク質である、LBR、MAN1、LAP2β、emerinの各mRNAを卵無細胞系で翻訳させ、それら抽出液で形成させた核の構造を調べた結果、LBRがクロマチン-核膜結合に主要な役割を果たす分子であることを突きとめた。LBRの内部欠損変異体mRNAを作製し、クロマチン-核膜結合に関わるドメインの解析を進めるとともに、LBR結合分子の解析を進めている。また、卵無細胞系に特異抗体を添加し、LAP2ωを阻害することにより、核の成長が著しく阻害されることが示された。さらに、LAP2ωの相互作用分子としてDNAポリメラーゼのクランプとして働くproliferating cell nuclear antigen (PCNA)が見いだされた。これは、初期胚型核内膜タンパク質が核の機能制御に関わることを示唆する興味深い知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツメガエル卵無細胞系を用いて核内膜分子の量や機能を操作する実験系が順調に進行した。卵抽出液にmRNAを添加して翻訳させる手法により、クロマチン・核膜結合に関わる核内膜タンパク質が明らかとなった。また、ツメガエル初期胚に発現する主要な核内膜タンパク質に対する抗体を作製し、卵無細胞系を用いてそれらの機能を阻害する実験を行い、それらが核形成や核の成長に役割を果たすことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度の研究で明らかにされた初期胚型核の構造構築に関わる核インターフェース複合体構成分子について、mRNA、モルフォリーノオリゴヌクレオチド、特異抗体などを胚に顕微注射して発現量や機能性を操作し、細胞核の構造への影響を調べるとともに、胚発生の進行程度(発生停止ステージと形態形成異常の有無)および胚性遺伝子発現の開始時期と転写レベルを解析する。また、胚細胞の核を単離してクロマチンへの転写因子の結合量を解析する。形態形成に異常が見られる場合はDNAマイクロアレイを用いて遺伝し発現パターンを解析する。
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Research Products
(2 results)