2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝情報場解析のためのヒストン修飾酵素蛍光可視化プローブの開発
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
23114710
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00444563)
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Keywords | HDAC / 蛍光プローブ / クマリン / エステル転移反応 |
Research Abstract |
ヒストンの化学修飾は、クロマチンの構造変化を引き起こすことで遺伝子発現を制御する重要な役割を担っている。この修飾反応のうち、ヒストンのアセチルリジンを脱アセチル化する反応は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)という酵素によって触媒される。HDACは癌や生活習慣病、中枢神経疾患にも関わり、医薬品の主要な標的酵素となっていることから、医学・創薬の分野で極めて大きな注目を集めている。一方、その重要性にもかかわらず、HDACの活性をリアルタイムに蛍光検出することのできるプローブは、未だに開発されていない。本研究では、ワンステップの操作で迅速にHDAC活性を検出するプローブの開発を目的として研究を行った。 まず、アセチルリジンからなる基質構造をHDACの基質部位として、7-ヒドロキシクマリンを蛍光色素部位として組み込んだ分子を設計した。さらに、酵素反応後に生成するアミンと反応するように、7-ヒドロキシクマリンの7位のヒドロキシ基を求電子性反応基である炭酸エステルに変換した。ここで重要なことは、7位を炭酸エステル化したクマリンは非蛍光性となることである。また、酵素反応が起こりアミンが生成するとこの色素の炭酸エステル部位が反応した場合、炭酸エステルは分解され7-ヒドロキシクマリンが生成し蛍光性となると考えられる。このエステル転移反応は酵素反応後自動的に起こることから、プローブと酵素を混合するだけで、酵素活性を蛍光検出することができる。実際に、酵素反応を行ったところ、酵素によりプローブが脱アセチル化され、蛍光強度が上昇することが示された。以上の結果から、ワンステップでHDACの活性を検出するプローブの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、プローブ設計・合成が完了し、蛍光検出アッセイが完了している。HPLCや蛍光分光法により、HDACによりプローブの基質部分が脱アセチル化され、エステル転移反応が起こっていることが判明している。これらの実験結果から、当初目的であったプローブと酵素を混合するだけというワンステップの操作によって、HDAC活性を検出することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、酵素反応の検出には数時間を要することが判明している。このため、検出時間を短縮することのできるプローブの開発が必要となっている。そこで、酵素との反応速度を向上させるため、基質構造の改変を行う。また、酵素反応後のエステル転移反応の速度を向上させるため、リジンと蛍光色素の距離を考慮に入れた分子設計を行う。これらの実験を通して、HDAC活性を短時間で検出することのできるプローブの開発を行う。
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Research Products
(2 results)