2011 Fiscal Year Annual Research Report
RNAポリメラーゼIIによる転写の場のダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
23114711
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 宏 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (30241392)
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Keywords | 遺伝子発現 / クロマチン / ヒストン修飾 / 転写 / エピジェネティクス / ヒストンアセチル化 / 生細胞計測 |
Research Abstract |
転写は、遺伝情報発現の出発点であるが、細胞核において転写の場がどのように構築され、制御されるのかについての基本的問題は解明されていない。本研究は、転写の場の形成機構を明らかにするために、転写誘導可能な遺伝子アレイを保持する細胞を用いて、転写因子のクロマチン結合とRNAポリメラーゼIIの活性化の動態を生細胞で可視化する。本年度は、RNAポリメラーゼIIの各種リン酸化型に加え、基本転写因子とクロマチンリモデリング因子の生細胞観察を行った。本研究で用いたMMTV遺伝子アレイには、グルココルチコイド受容体(GR)が集積した後、数分のうちにRNAポリメラーゼIIが集積し、開始、伸長反応に至る。基本転写因子のうち、TATA結合蛋白質(TBP)は刺激前に既にアレイに結合していたが、RNAポリメラーゼIIの蓄積と転写開始過程において、他の基本転写因子(TFIIBやTFIIE)の集積はほとんど検出できなかった。このことは、転写開始前複合体が安定に存在しないことを示唆しており、FRAPによる分子動態解析の結果とも合致した。一方、クロマチンリモデリング因子のひとつは、RNAポリメラーゼIIの集積に遅れて、転写伸長とほぼ同時期から集積し始めることが明らかになった。これらの結果から、MMTV遺伝子アレイは、刺激に対して即応できるように比較的転写に対して準備された構造をとっており、GRの結合により速やかに基本転写因子やRNAポリメラーゼIIがリクルートされ、大規模なクロマチンリモデリングなしに転写の場が形成される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MMTV遺伝子アレイの転写誘導後のRNAポリメラーゼIIの活性化を計測する系を確立し、各リン酸化状態にあるRNAポリメラーゼIIの集積や基本転写因子、クロマチンリモデリング因子の動態についての計測が順調に進んでいる。次年度にキネティックモデリングを行うことで、研究を達成できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、遺伝子アレイへのRNAポリメラーゼIIの集積、転写開始、転写伸長の計測データをキネティックモデルへフィッティングし、最もよく適合するパラメータの数値を導き出す。また、エピジェネティックなヒストン翻訳後修飾が転写活性化のキネティクスに与える影響を明らかにする予定である。
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Research Products
(11 results)