2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性クロマチンモデルとしての人工遺伝子制御システムによる遺伝子転写調節概念
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
23114717
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 佳樹 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70284528)
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Keywords | クロマチン / 転写制御 / ヒストンコード / 遺伝子送達 / プロテインキナーゼ / ブラウン運動 / ヒストン / 遺伝子キャリヤー |
Research Abstract |
遺伝子はゲノム中では転写は抑制されており、これが必要に応じて活性化される。その分子メカニズムとして、転写因子の結合に伴うヒストンのアセチル化などの化学修飾によるDNA鎖の高次構造変化などが明らかにされているが、それらによりDNA鎖のどんな物理化学的性質が変化することが転写の活性化を可能にするのかは全く不明である。これに対し、申請者らが開発したペプチドと高分子からなる人工転写制御系は、複合体を形成した遺伝子の転写を抑制し、側鎖ペプチドのキナーゼによるリン酸化やアセチル化で転写を活性化できる。そこで、本システムをクロマチンの機能モデルと捉え、化学修飾により転写が活性化する際のDNA鎖の物理化学的性質の変化をとらえることを最も重要な目的としている。これまでの検討で、リン酸化やアセチル化により転写が活性化される際にDNA鎖の運動性が向上することが示唆されており、本年度はこれを蛍光寿命変化を指標にして検証することを試みた。独自の評価系と装置を構築し、種々の蛍光色素を検討した結果、DAPIを用いた場合に、ヒストンテールをグラフトした高分子とDNA鎖の複合体において、複合体形成時にDNA鎖の運動性が大きく低下し、アセチル化により転写が回復する際に運動性も向上することを確認することに成功した。また、より転写制御を高効率に行える制御剤開発のために、DNA鎖の運動をより抑制できる分子設計として、高分子主鎖に疎水基としてコレステロールを導入した分子を設計・合成したところ、極めて高効率に転写を抑制することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において最も重要な課題である転写のON/OFFを制御する本人工転写制御系におけるペプチド部分のアセチル化に伴うDNA鎖のブラウン運動の変化を実際にとらえることに成功した。また、ブラウン運動を高効率に抑制できる分子設計として、疎水基を導入した制御剤の開発に成功した。これらにより、当初計画した本年度の目的はほぼ完全に達成しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の最終年度は、23年度に成功したDNA鎖の運動性評価の方法論を用い、より大きく遺伝子転写が活性化するキナーゼ応答系を用い、実際に転写の活性化の程度とDNA鎖の運動性の相関を詳細に検討し、DNA鎖のブラウン運動の制御が転写制御の本質であることを実証したい。また。その考えに基づき、高効率に標的シグナルで転写制御をおこなえる制御剤を開発し、疾患細胞特異的な治療デバイスの開発につなげていきたい。
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