2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝情報場形成に関わるテトラヒメナの選択的核輸送システムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
23114724
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
原口 徳子 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所, 上席研究員 (20359079)
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Keywords | 細胞・組織 / 遺伝子 / 蛋白質 / 生体分子 / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
繊毛虫であるテトラヒメナは、ひとつの細胞内に大核・小核という構造と機能の異なる2つの細胞核を持つという特徴がある。本研究課題は、その特性を活かして、テトラヒメナが大核・小核へのタンパク質の核輸送をどのように使い分けているかを検討し、大核・小核の遺伝情報場形成に関与する因子とその仕組みを明らかにするものである。具体的には、項目1)大小核特異的な核輸送システムの同定と、項目2)核分化における核輸送関連因子の動態の解析を行う。本年度は、主に項目1について検討した。まず大小核に特異的な核移行シグナルの同定を試みた。大核特異的なヒストンタンパク質(histone H1)と小核特異的なリンカーヒストンタンパク質(MLH)の断片それぞれにGFPを融合させたものをテトラヒメナ細胞で発現させ、その断片の大小核への局在性から、大小核局在に必要な最小ペプチドを決定した。さらに、大小核特異的あるいは共通のヌクレオポリン(例えば、Nup98,Nup96,Nup93など)に結合するタンパク質をプロテオミクスの方法で網羅的に解析することによって、大小核特異的なヌクレオポリンあるいは輸送因子であるインポーティンβの解明を進めた。現在までのところ、核膜孔複合体に関しては、大小核それぞれに特異的なヌクレオポリンとしてNup153やNup214を、共通のものとしてNup85,Nup54など、新規に複数のヌクレオポリンを同定した。核輸送因子については大小核にそれぞれ特異的なimportin βを一つずつ同定した。項目2については、項目1で見つかったNup98,Nup93について、核分化過程をtime-lapseとFRAP法、ライブクレム法で観察した。これらの成果は国内外の学会や研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
核輸送システムの解明には、核移行シグナル、輸送因子、核膜孔複合体の3者を同定する必要があるが、そのうち大小核特異的な核移行シグナルの同定は終了した。輸送因子については大小核特異的な因子を少なくとも1つずつ同定した。現在、核膜孔複合体を構成するヌクレオポリンの同定を進めており全容を解明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
核輸送システムのうち、核膜孔複合体を構成するヌクレオポリン(大小核のそれぞれに約30種類)の全構成因子の同定を行い、核膜孔複合体構造の全容の解明を進める。1年目で同定した大小核特異的な核移行シグナル・輸送因子・核膜孔複合体タンパク質のそれぞれが、どのように協調して大小核特異的な核移行を実現しているか検討する。そのためには、大小核に特異的な因子同士が相互作用するかどうかを検討する。受精核から大小核に分化する過程で、これらの輸送因子の挙動を生きた細胞で観察し、核特異的な輸送システムが大小核に分化に及ぼす影響・役割を検討する。
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