2011 Fiscal Year Annual Research Report
樹状突起における情報処理ダイナミクスの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
23115501
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八尾 寛 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (00144353)
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Keywords | チャネルロドプシンH23- / トランスジェニックラット / 海馬 / オプトジェネティクス / 光刺激 / ArchT / ソフトウェア開発 / 脳スライス |
Research Abstract |
単細胞緑藻類の一種クラミドモナス由来のチャネルロドプシン2(ChR2)遺伝子をthy1.2プロモーター制御下に発現するトランスジェニックラットを開発した。このラットの一系統W-TChR2V4においては、中枢および末梢神経系のさまざまなニューロンにおいて、ChR2が発現し、光刺激に応答し活動が惹起されることを確認した。たとえば、海馬においては、歯状回顆粒細胞、CA3錐体細胞、CA1錐体細胞などの主要な細胞を光刺激できた。また、脊髄後根神経節においては、大型の機械受容ニューロン特異的にChR2が発現していたが、小型の侵害受容ニューロンには発現していなかった。また、皮膚においては、メルケル小体やマイスナー小体などの触覚受容器に入力している感覚神経終末において、ChR2の発現が認められたが、侵害受容に関連した自由神経終末には発現していなかった。本ラットの足掌部に対し青色光を照射したところ、光照射に同期した当該肢の運動が観察された。すなわち、光受容により触覚が引き起こされたことが示唆された。これと並行し、DLP[○!R]方式のイメージプロジェクターを顕微鏡落射管に装着した装置とこれを制御するソフトウェア(多点並列光刺激システム、MiLSS)を開発した。W-TchR2V4ラット海馬スライスを用い、顕微鏡下に同定された複数の関心領域を並列に青色光でパターン照明し、ニューロンの活動を制御できることを検証した。また、ArchTと緑色光または黄色光パターン照明の組み合わせにより、スライス局所回路におけるニューロンの活動の抑制を確認した。これらを組み合わせることにより、汎用性の高いオプトジェネティクス研究システムが得られた。すなわち、急性脳スライスなどの標本を用い、任意の関心領域に対し高い空間解像度と時間分解能でパラレル光刺激することが、容易になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究で、樹状突起入出力の解析に必要なトランスジェニック動物と多点並列光刺激システムを組み合わせた実験系を確立した。したがって、今後の研究に向けて、技術的な困難のほとんどを解決した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究において確立した実験系を駆使し、樹状突起部位に特有の入力-応答特性の解明およびその基盤となるイオンチャネルの同定、連合/交連(A/C)入力に対する苔状線維(MF)入力や貫通線維(PP)入力の促進効果の定量的評価、MF入力やPP入力が、A/C入力のLTP/LTD可塑性に影響する大きさ及びタイミングの定量解析、樹状突起の情報処理ダイナミクスに対する、ニューロモジュレータの制御様式とそのメカニズムの解明、を行い、ニューロン等価回路のネットワークモデルを構築する。
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