2011 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な規則に基づく行動制御のメゾスコピック神経回路メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
23115505
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 賢治 東京大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (60446531)
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Keywords | 大脳皮質 / 錐体細胞 / 局所回路 / 大脳基底核 / ドーパミン / 報酬予測誤差 / 強化学習 |
Research Abstract |
本研究課題では、大脳皮質の局所神経回路における興奮性錐体細胞と抑制性介在神経細胞の働きについて、細胞の多様性や、錐体細胞の樹状突起の性状などに注目しつつ、メゾスコピックな回路としてどのような演算が行われうるか、そしてそれらが、行動制御を司る、よりグローバルな回路においてどのような役割を果たすと考えられるか、を明らかにしていきたいと考え、研究を行っている。23年度は、一つには、大脳皮質の錐体細胞の尖端樹状突起遠位部への抑制性入力の作用について、数理モデルを用いた解析・検討を行った。そして、集団的に振動する抑制性入力によって起こる錐体細胞の発火パターンの変化により、受け手側の細胞のシナプス短期可塑性の性質にも依存した形で、下流の情報伝達経路が切り替わる可能性を見出した。また、並行して、大脳皮質局所回路に混在する異種の錐体細胞集団、具体的には両側の大脳基底核線条体に投射する細胞集団と、錘体路および片側(同側)の線条体に投射する細胞集団に関して、特異的な生理・結合特性(両者間の結合の向き、及びそれぞれの内部での再帰結合の強度と短期可塑性)、およびそれらから線条体の異なる細胞集団への選択的投射についての、機能的意義の検討・考察を行った。そして、それら生理・結合特性及び選択的投射に基づいて、下流に当たる(と考えられる)中脳のドーパミン細胞において、得られた報酬およびこれから得られると期待される報酬の和から、得られると期待していた報酬を差し引いた、いわゆる「報酬予測誤差(Temporal Difference error, TD誤差)」が計算されるという新しい検証可能な仮説を提案した。ドーパミン細胞の活動が報酬予測誤差を表し、動物や人が「強化学習」様の学習を行う上で中心的な役割を果たす可能性が広く認識されており、本提案は、その神経回路機構解明を大きく進展させることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
グローバルな神経回路の演算について、当初は、より抽象度の高い数理モデルを用いた検討を行う予定であった。しかし、実際の生理・結合特性を検討する過程で、「研究実績の概要」に記したように、価値や(広義の)報酬に基づく学習(強化学習)において中心的な役割を果たすと考えられている「報酬予測誤差」様のシグナルがドーパミン細胞においていかに計算されるかについてのメカニズムを着想することができ、当初想定していたよりも、より具体的かつ現実的な回路機能研究が行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の後半に記した、報酬予測誤差計算についての仮説をもとに、具体的な神経回路モデルを構築してシミュレーション・解析を行って、これまでに知られている強化学習等に関わる実験結果を説明しうるかを検証し、また、検証可能な予測を導出する計画である。さらに、そうした回路機能に、「研究実績の概要」の前半に記した、(樹状突起への振動的抑制の入力に伴う)錐体細胞の発火パターンの変化を介した情報伝達経路の切り替わりの可能性が、いかに関わるかについて考察を進める計画である。
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Research Products
(4 results)