2011 Fiscal Year Annual Research Report
相同ニューロンより構成される特徴抽出機構の形成
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
23115508
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 洋一 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00144444)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 後脳 / 網様体脊髄路ニューロン / マウスナー細胞 / カリウムチャネル / 発火パターン / 興奮性 / 電気生理学 |
Research Abstract |
本研究は,モデル脊椎動物であるゼブラフィッシュの後脳分節に繰り返される網様体脊髄路ニューロン群(RSNs)の中で,マウスナー(M)細胞だけが特異的な興奮性を獲得する,分子基盤を調べることを目的とした.本年度は,M細胞の発火特性が他のRSNsと同様の連続発火型から単発発火型に変化する機構を,電気生理学的および分子生物学的手法で解析した.その結果,低閾値型カリウムチャネルの一つであるKv1.1αサブユニットがM細胞およびM細胞と形態学的に相同のRSNsに存在し,さらにKvβ2が単発発火特性を示す時期のM細胞に選択的に現れることを見出した.Kv 1.1αサブユニットが膜電位-60mV以上で活性化する低閾値型カリウムチャネルを構成し,Kvβ2との組み合わせにより外向き流が顕著に増大することを卵母細胞に発現させた再構成系で示した.これに加えて,別の低閾値型カリウムチャネルを構成するKv7.4も,M細胞に選択的に発現することを見出した.Kv7.4チャネルは早い時間経過で活性化するKv1.1チャネルとは異なってゆっくりと活性化する特徴も明らかにした.Kv1.1あるいはKv7.4のどちらか一方だけを阻害した場合は,M細胞は単発発火型から強い順応を示すバースト発火型に変化するが,両者を阻害すると,M細胞は他のRSNsと同じように順応のない連続発火型に変化することを見出した.また,Kv1.1については,単発発火だけでなく,発火までの時間を短縮する効果があり,逃避運動の開始を早くする役割も示唆された.以上の結果から,すばやい逃避運動をトリガーするM細胞が,大きな脱分極入力に対して短い潜時で単発の活動電位を発生するという特異的な興奮性を獲得するには,これらのサブユニットで構成される2種類の低閾値型カリウムチャネルの発現が必要であり,他のRSNsとの主な特性の違いはこの2つで示されると結論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
M細胞の興奮性を最もよく表す低閾値型カリウムチャネルのサブユニットの同定,発現,電気的特性について十分に解析できた.当初はKv1.1αおよびKvβサブユニットについて調べる計画であったが,研究がさらに進み新たにKv7.4サブユニットの存在をも突き止めることができ,さらにその性質についても解析が進み,両者が相補的にM細胞独特の特性を生み出していることが示唆された.これらの発見はニューロンの特性を生み出す新たなメカニズムとして注目されるであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
M細胞のみで遺伝子発現を操作するシステムを確立し,本年度見出された2つのカリウムチャネルの発現がM細胞の発火特性とM細胞によって駆動される逃避運動に果たす役割をさらに解析する.また,これらのカリウムチャネルがM細胞に特異的に発現する分子基盤についても,分節の個性を決めるHox遺伝子などに焦点を当てて検討する.
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Research Products
(21 results)