2011 Fiscal Year Annual Research Report
メゾ回路内の情報伝達から発火活動を理解する
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
23115512
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 琢真 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教 (40526224)
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Keywords | 理論神経科学 / 局所回路 / 情報量最大化 / リカレントネットワーク |
Research Abstract |
本年度は皮質運動野で課題実行中に観察されるような持続発火活動が出現するモデルを構築した。神経回路のモデル研究では、単純化されたニューロンモデルを組み合わせてネットワークを構築する。本研究でもネットワーク(特にモデルニューロン同士に相互結合のあるリカレントネットワーク)を使った。ネットワークで保持される情報量が大きくなるように学習すると持続発火活動が出現するという仮説を立て、検証した。リカレントネットワークが保持する情報量を測るのは難しいので、次のようにして情報保持能力の高いネットワークを構築した。情報保持能力が高いネットワークでは、複数の入力時系列を入力したとき、ネットワークの最終状態からどの時系列が入力されていたかを識別できるはずである。したがって、複数の時系列の弁別性能が高くなるようなネットワークを作ればよい。モデルニューロンとしては離散時間の発火率モデルを二種類使った。一つはコンダクタンス型ニューロン的なモデルで、発火率は仮想的な平衡膜電位の関数である。もう一つは電流型ニューロン的なモデル(通常よく使われるシグモイド型ニューロンモデルと同じ)で、発火率は仮想的な入力電流の総和の関数である。現実の神経細胞に近いのは前者のニューロンモデルであることがわかった。この二つのニューロンモデルでそれぞれネットワークを作り、その情報保持能力が高くなるように結合を調整すると、コンダクタンス型ニューロン的なモデルを使った場合は持続発火状態と低発火率状態が生じた。一方で電流型ニューロン的なモデルでは明瞭な持続発火や低発火率状態は生じず、発火率は平均付近を緩やかに変動した。以上により、持続発火活動が脳で観察されるのは、神経細胞が膜のコンダクタンスによって駆動されるような性質を持っており、回路の情報保持能力が高くなっているからであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、課題実行中の神経細胞の持続発火を説明することと複雑型細胞など高次の特徴に応答する細胞の選択性を説明することを目的とした。本年度はこの一個目の目的をおおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の持続発火活動を説明するモデルの研究を進めるとともに、第二の目的である高次の特徴を検出する細胞の形成を説明するモデルを構築する。現在、単純型細胞の出力を加工したものを入力として受けるネットワークで情報量最大化を行うと複雑型細胞的な選択性が生じてくることがわかったので、来年度も継続して研究を進めていく予定である。
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