2011 Fiscal Year Annual Research Report
ランダムな神経細胞の個性化メカニズムとメゾスコピック神経回路
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
23115513
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八木 健 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10241241)
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Keywords | 神経細胞 / 神経回路 / 遺伝子制御 / 複雑システム / カドヘリン / 細胞間相互作用 |
Research Abstract |
脳では、個々の神経細胞ごとに特異的な局所回路があり、脳回路の機能単位であるメゾスコピック神経回路(メゾ回路)を構成している可能性が考えられる。本研究では、このメゾ回路をもたらす分子的基盤を明らかにすることを目標として、個々の神経細胞においてランダムな組み合わせ発現をしているcPcdh分子群に注目して、個々の神経細胞のもつ特異的なシナプス形成メカニズムと複雑ネットワーク(集団性と短距離性を有する)の形成メカニズムを明らかにする。 本年度、私たちはcPcdhαとcPcdhβのランダムな遺伝子発現を制御するエンハンサーをDNase hyppr sehsitive assayにより同定し、これらエンハンサー領域欠損マウスの作製と解析を行った。その結果、cPcdhβのランダムな遺伝子発現を制御するシス制御領域 (cluster control region: CCR) を特定することに成功した。また、このCCR欠損マウスでは、機能的構造である大脳皮質体性感覚野におけるバレル構造が認められなくなっていた。これらの結果により、cPcdhβのランダムな遺伝子発現が、大脳皮質の機能的局所回路形成に関わる可能性が示唆された(Yokota et al.,2011)。 更に、cPcdh遺伝子クラスター領域に結合するインシュレータのCTCFを興奮神経細胞特異的に欠損させたマウスの作製ができ、この遺伝子変換マウスにおいてcPcdh分子群のランダムな発現に異常があることを確かめることに成功した。この大脳皮質興奮性神経細胞におけるCTCF欠損マウスにおいても大脳皮質体性感覚野におけるバレル構造が認められなくなっていたことより、cPcdh分子群のランダムな発現が大膨皮質の機能的局所回路形成に関わる可能性が示唆されてきている。また、このマウスでは興奮性神経細胞の樹状突起形成やスパイン形成での異常が認められ、mEPSCの頻度の減少が認められており、シナプス形成や神経回路形成での異常が明らかとなってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
cPcdhβのランダムな発現を制御するシス制御領域の同定に成功しただけでなく、この領域欠損マウスにおいて大脳皮質体性感覚野における機能的バレル構造の異常が認められ、メゾ回路へのアプローチの進展が当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Pcdhのランダムな発現を制御する因子を更に明らかにして行くとともに、このランダムな発現調節とメゾ回路形成との関連性を明らかにする。また、cPcdhを直接欠損したマウスの作製をすることにより、cPcdhの多様性と神経回路形成との関係を生理学的に解析して行く。
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Research Products
(20 results)