2011 Fiscal Year Annual Research Report
2つの相反するスパイクタイミング依存性可塑性の協調によるメゾ神経回路の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
23115515
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 文隆 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00202044)
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Keywords | 臨界期 / 体性感覚野 / スパイクタイミング依存性可塑性 / マウス / 受容野可塑性 / バレル皮質 / GABA細胞 / 視床皮質投射 |
Research Abstract |
ほ乳類の大脳皮質には発達の一時期に、入力に応じて神経回路を編成する可塑性を示すが、これは環境に適応した脳機能を獲得するメカニズムとして、その解明は脳機能を理解する上で非常に重要である。発達期可塑性は、皮質4層-2/3層間のシナプスが重要である事が知られているが、その正確な開始時期、また開始のメカニズムについては多くは不明であったが、4層-2/3層間シナプスではその可塑性の方向と程度がシナプス前後細胞の発火順序に依存する、スパイクタイミング依存性可塑性(STDP)を示すことが知られていた。 今回、我々は、4層-2/3層間シナプスにおいて、STDPの性質を生後発達を追って調べたところ、生後13-15日を境にその性質が劇的に変化することを初めて見出した。生後15日以降では4層→2/3層順で長期増強(LTP)、逆に2/3層→4層順で長期抑圧(LTD)となることは先行研究と同一であったが、生後13日以前には4層-2/3層順でも2/3層-4層順でもいずれもLTPを示すことが明らかとなった。また、LTPのメカニズムも、15日以降はCa-CaM依存性プロテインカイネースを介するにもかかわらず、生後13日以前ではPKA依存性であった。また、LTDが欠落すると入力依存性の可塑性は起こらないことも明らかとなった。以前我々は、4層GABA細胞への視床からの投射により、感覚入力が4層-2/3層順の発火を起こす事を示したが、生後13日以前はこのメカニズムが未熟であるため発火順序が確定していない可能性が高い。以上より、発火メカニズムの完成と平行してSTDPの性質が変化することにより、生後13-15日を境に入力依存性可塑性が開始するメカニズムが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、STDPの変化があるかどうかだけを調べるつもりでいたが、STDPの変化が確認できたのみならず、LTDの欠落は感覚入力除去による皮質の変化をもたらすことができないことを示すことにより、生後13日以降にLTDを獲得することが臨界期可塑性の開始であることを示すことができた。また同時に、スパイク発火制御とSTDPは臨界期可塑性のメカニズムに本質的に関わっていることを示すこととなった。臨界期可塑性は、その発見がノーベル賞受賞対象の一部でもあった重要な現象であり、そのメカニズムの重要な一部を明らかにできたことは意義が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
4層-2/3層間には、生後第2週目にこれまで知られていなかったSTDPがあることを我々は見出した。これがなぜ3週目のようにLTDを示さないのかそのメカニズムを次に明らかにする。これについては既に、4層終末にLTDを起こすカンナビノイド受容体が機能していないことを明らかにした。同時に意外なことに、生後2週目には視床から2/3層へも多くの投射があり、この終末にはカンナビノイド受容体が機能していることも見出している。また、この終末は、驚くべき事にプレーポスト、ポスト-プレのいずれの方向にもLTDだけを示すSTDPを示すことも見出している。すなわち、2/3層へは、この時期、4層からと2/3層からと逆向きのSTDPが集束していることになる。視床の活動は4層をメインにドライブすること、また視床-2/3層投射はアベラントであることを考えると、4層からの投射と視床からの投射は2/3層でSTDPにより回路編成が起こっている可能性が考えられるので、これを検証する。
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Research Products
(10 results)