2012 Fiscal Year Annual Research Report
記憶想起の分子制御基盤解明と記憶想起障害を示すモデルマウス開発の試み
Publicly Offered Research
Project Area | Systems molecular ethology to understand the operating principle of the nervous system |
Project/Area Number |
23115716
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
喜田 聡 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80301547)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 行動学 / 記憶制御 / サーカディアンリズム / 転写 / トランスジェニックマウス / 記憶想起 |
Research Abstract |
本課題では、記憶想起制御に対する時計遺伝子BMAL1の役割を明らかにして、記憶想起のサーカディアン制御機構の分子基盤を解明することを目的とした。bHLH-PAS型転写調節因子BMAL1は、サーカディアンリズム産生の起点となる時計遺伝子として機能する。研究代表者は、前脳領域におけるリズム制御と学習・記憶能力との関係を明らかにするため、前脳特異的にドミナントネガティブ型BMALl(dnBMAL1)を発現するマウスを作製し、解析を進めてきた。dnBMAL1発現マウスでは、前脳領域においてCLOCK/BMAL1標的遺伝子群のmRNA発現レベルが有意に減少していたものの、サーカディアンリズム中枢である視交叉上核(SCN)を含む視床下部ではこれらの発現異常は観察されなかった。さらに、SCNに依存する概日行動リズムにも異常は認められなかった。以上の結果から、dnBMAL1発現マウスは前脳領域特異的にサーカディアン転写リズムが破壊されていることが示唆されている。興味深い点として、dnBMAL1発現マウスは、記憶形成には障害を示さないものの、明期開始10時間後(ZT10)付近においてのみ、社会的認知記憶、恐怖条件付け文脈記憶及び物体認識記憶などの様々なタイプの記憶の想起に障害を示すことが示された。本年度は、さらに行動解析を進め、dnBMAL1を成体となってから発現誘導しても、ZT10において記憶想起の障害が観察されることを示し、dnBMAL1は脳の発達等に影響を与えずに、記憶想起を直接的に障害したことを強く示唆した。また、野生型マウスも時間帯依存的に記憶想起能力に差異が存在することを新たに見いだした。以上の結果から、記憶想起のサーカディアン制御基盤が存在し、この制御にBMAL1が中心的役割を果たすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに遺伝子操作マウスにおいてのみ観察されていた現象を、実験条件を調節することで、野生型のマウスにおいても観察されることを見いだしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、記憶想起を制御する制御基盤の解明が課題である。次世代シークエンサーを用いた詳細遺伝子発現プロファイルなどの網羅的解析を通して、記憶想起を制御する新たな遺伝子群の発見が急務である。
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[Journal Article] Roles of CREB in the regulation of FMRP by group l metabotropic glutamate receptors in cingulate cortex.2012
Author(s)
Wang, H., Morishita, Y., Miura, D., Naranjo, J. R., Kida, S., Zhuo, M.
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Journal Title
Molecular Brain.
Volume: 5
Pages: 27
DOI
Peer Reviewed
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