2011 Fiscal Year Annual Research Report
レム睡眠における大脳賦活化の意義とメカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Systems molecular ethology to understand the operating principle of the nervous system |
Project/Area Number |
23115724
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 悠 独立行政法人理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 研究員 (40525812)
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Keywords | 神経科学 / 遺伝学 / 分子生物学 / 睡眠 |
Research Abstract |
私たちの脳は睡眠中に、夢という独特の意識世界を創り出すことができます。夢を生じるREM睡眠は、一部の脊椎動物に固有の生理状態であり、脳の高次機能に関わることが期待されます。しかしながら、なぜそのような生理状態が生まれたのか、その進化的起源や生理的意義は依然不明です。本研究では、遺伝学的なアプローチにより、こうした問題に挑みました。 REM睡眠時固有の脳の活動状態を生じるメカニズムとして、ネコでは脳幹の「X area」という領域の関与が指摘されていました。このX areaのREM睡眠における役割を解明し、その細胞系譜や分子特性を解明することが、REM睡眠の進化的起源の理解につながり、また、X areaの機能を人為的に阻害できることが、REM睡眠そのものの生理的意義の理解につながるのではないかと期待し、取り組んできました。具体的にはこれまでに、まずマウスにおいてX areaに選択的に発現する遺伝子を同定し、そのコンディショナルノックアウトマウスを作製しました。これらのマウスでは、体重の低下や若い時期での突然死などの表現型が観測されました。現在、これらのマウスで睡眠の異常がないかを観測し、こうした異常と睡眠の関連を検討中です。また、X areaに選択的に神経発火抑制遺伝子を発現するトリプルトランスジェニックマウスの作製にも成功しました。このマウスについては、実際にX areaでの神経活動が抑制されているかを検討するとともに、睡眠の異常の有無を検討していく予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」で今年度中の作製を掲げた脳幹X area選択的コンディショナルノックアウトマウスおよび脳幹X area選択的な機能阻害トランスジェニックマウスを得られたことを踏まえると、順調に進展していると考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も「研究実施計画」に則り研究を推進するものとします。具体的には、上記のように今年度作製したコンディショナルノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスから脳及び筋活動を慢性的に記録し、睡眠の表現型の異常の有無を検討します。もし異常が検出された場合には、さらに細胞および行動レベルでの表現型を評価し、睡眠の異常が脳の恒常性維持や発達に及ぼす影響について解析を進めます。
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