2011 Fiscal Year Annual Research Report
脂質関連遺伝子の変異により発症する先天性毛髪疾患の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Machineries of bioactive lipids in homeostasis and diseases |
Project/Area Number |
23116508
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
下村 裕 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70397107)
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Keywords | 毛髪疾患 / 脂質 / 遺伝学 |
Research Abstract |
近年の分子生物学の進歩に伴い、遺伝性毛髪疾患の原因遺伝子が複数同定された。その中には、脂質のシグナル伝達系で重要な役割を果たす遺伝子も含まれている。一方、原因遺伝子が未知の疾患も残されており、更には、日本人における本症の遺伝子レベルでの情報は非常に乏しいのが現状である。 平成23年度は、非症候性の先天性毛髪疾患の日本人家系36家系について遺伝子解析を行った。その結果、30家系でリパーゼH(LIPH)遺伝子に変異が同定された。変異の種類・パターンは、2種類のミスセンス変異(c.736T>A(p.C246S),c.742C>A(p.H248N))がそれぞれのホモ接合型あるいは両者の複合ヘテロ接合型だった。日本人のLIPH遺伝子の変異は現在までにこの2つしか報告されていない。本変異は日本人に特有の変異であり共通の祖先を発端者とする、いわゆる創始者変異であることが強く示唆された。また、これらの変異アレルを有する頻度から、日本人においては1万人に1人程度の患者が存在していると推定された。今回解析を行った36家系中、30家系という高い頻度でLIPH遺伝子に変異が同定されたことからも、日本人の非症候性毛髪疾患の原因遺伝子としてLIPH遺伝子が最も重要であると考えられた(Shimomura, J Dermatol, 2012)。一方、残りの6家系については、既知の原因遺伝子がすべて除外されたことより、まだ報告されていない遺伝子に変異が存在する可能性が示唆された。 上記に加え、脂質マシナリーの班員の一人である、浜松医科大学解剖学教室の瀬藤光利教授のグループとの共同研究により、新たな手法を用いて、加齢に伴い量が変化する毛髪中の脂質を複数同定した(Waki et al., PLoS One, 2011)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標は、収集した家系について既知の原因遺伝子のスクリーニングを行うことであったが、おおむね目標通りに解析が進んだ。既知の遺伝子がすべて除外された家系については、当初の予定通り、平成24年度に新規の疾患原因遺伝子の検索を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の解析を通じ、既知の原因遺伝子がすべて除外された家系が複数抽出された。それらの家系について、連鎖解析、exome sequencing、およびモデル動物での知見から推定される候補遺伝子の解析等を行うことにより、新規の疾患原因遺伝子の同定を目指す。同定された遺伝子については、変異がその機能に及ぼす影響について、培養細胞を用いたin vitroレベルでの詳細な解析を行うとともに、患者および健常人の毛包における発現パターンについても、in situ hybridizationや免疫組織化学染色等で解析を行う。
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[Presentation] 毛を科学する2012
Author(s)
下村裕
Organizer
新潟大学テニュアトラックシンポジウム
Place of Presentation
朱鷺メッセ(新潟市)(招待講演)
Year and Date
2012-03-02