2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト全身性疼痛疾患モデルにおける脂質制御マシナリーの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Machineries of bioactive lipids in homeostasis and diseases |
Project/Area Number |
23116513
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
植田 弘師 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00145674)
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Keywords | LPA / 全身性疼痛 / バイオマーカー / エピジェネティクス / 質量分析定量 / LPA_3受容体 / PLA2 / 創薬 |
Research Abstract |
本研究では、線維筋痛症を含む上位脳が深く関わる全身性疼痛について、申請者が見出した神経障害性疼痛誘発因子リゾホスファチジン酸(LPA)合成の観点から、その責任領域、責任分子を網羅的かつ体系的に解析し、慢性痛の創薬およびバイオマーカー探索を目指す。今年度は、左足の末梢神経障害が反対側の痛み(ミラーイメージペイン)を含む全身性の疼痛を誘発することを明らかにし、本モデルを用いて、LPA責任脳領域を明らかにした。具体的には、質量顕微鏡を用いて前駆体LPCの可視化を行い、神経障害後に視床特異的に増加することを見出した。更に、マトリックスを使用しない新規のTOF-MS法により、LPCの定量に成功し、LPAについては、Phostag技術を用いて定量的に視床に上昇することを証明した。さらに、本モデルにおいて、責任脳領域にLPA1およびLPA3受容体に対するsiRNAを導入することにより、慢性疼痛の消失を確認している。一方、脂質関連遺伝子群の発現変調機構に関しては、末梢神経障害疼痛の責任領域である脊髄およびDRGで行い、LPA合成に関与する受容体や複数のLPA合成に関連する酵素のアイソフォームの長期にわたる発現上昇を見出した。また、LPA3受容体については、障害誘発性のLPA産生に関与することを明らかにしており、LPA3受容体阻害剤スクリーニング系を構築し、東京大学化合物ライブラリーを利用して既にスクリーニングを始めている。バイオマーカーの観点からでは、MALDI-TOF-MSの結果から16:0、18:0、18:1-LPAが増加しており、特に18:1-LPAは機能的な慢性疼痛のバイオマーカーになることが期待できる。以上の結果は、LPA標的が現在慢性痛治療に求められている原因治療および早期診断において新規性の治療薬およびバイオマーカーとなりうることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全身性疼痛疾患モデルとして従来我々が作成した線維筋痛症モデルに加えて、左足の末梢神経障害モデルが全身性疼痛を誘発することを明らかにした。このモデルを用いて、当初の目的であるLPA受容体が機能する責任脳領域の同定に成功している。また、脂質関連遺伝子群の変調に関しては、末梢神経障害時での脊髄レベルでのLPA産生機構を基にLPA合成の関連遺伝子を網羅的に解析することにより、複数のLPA合成酵素の発現上昇を見出している。特にLPA_3受容体に関しては、LPAの産生に関与していることを明らかにしており、東京大学化合物ライブラリーを利用して、新規のLPA_3アンタゴニストの創薬スクリーニングを既に開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
全身性疼痛疾患は、その原因により責任脳領域が異なることが予想されるので、今後神経障害に加えて、炎症性、筋痛性、精神ストレス性線維筋痛症やリウマチを含むモデルごとのLPA駆動責任領域を明らかにしていく。また、LPA関連遺伝子群の変調に関しては、今年度長期的に発現変化が観察された遺伝子について、ヒストンアセチル化およびDNAメチル化などエピジェネティクス機構の観点からその制御機構を明らかにする。さらに、創薬の観点からは、新規LPA_3アンタゴニスト探索として、東京大学化合物ライブラリーに加えて、海洋微生物ライブラリーおよび漢方薬ライブラリーなどオリジナルのライブラリーを利用したスクリーニング、さらにin silico解析から予想される市販の化合物を入手し、ヒット化合物を見いだす。また、バイオマーカー探索には、18:1-LPAに加えて、LPA合成・作用・分解の観点からさらに新規のバイオマーカーを探索する。
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Research Products
(31 results)