2011 Fiscal Year Annual Research Report
生命応答制御におけるプロスタグランジン最終合成酵素群の包括的解析
Publicly Offered Research
Project Area | Machineries of bioactive lipids in homeostasis and diseases |
Project/Area Number |
23116515
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
原 俊太郎 昭和大学, 薬学部, 教授 (50222229)
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Keywords | プロスタグランジン / 合成酵素 / ノックアウトマウス / 脂質性メディエーター |
Research Abstract |
本研究では、プロスタグランジン(PG)最終合成酵素群に注目し、PG様脂質性メディエーター産生フローの全体像を明らかにすることを目的としている。本年度は、主に、PGE合成酵素(PGES)の1つmPGES-1とPGI合成酵素(PGIS)、各々の単独KOマウスおよび二重欠損(WKO)マウスを用い、以下の点を明らかにした。 1)腎臓の形態:PGIS KOならびにWKOマウスで、成長に伴い腎臓の形態異常が観察され、PGI2が腎臓の維持に重要であることが示唆された。 2)雌性生殖系:mPGES-1 KO、PGIS KO、WKOいずれのマウスにおいても、卵胞形成や排卵に顕著な異常は認められなかった。mPGES-1以外のPGESを介し産生されるPGE2が他のPG類の機能を補填している可能性が考えられた。 3)炎症・疼痛応答:チオグリコレート誘導腹膜炎、酢酸ライジング反応は、いずれの単独KOマウスにおいても抑制されたが、WKOマウスではこの抑制が相加的に促進された。mPGES-1、PGIS両酵素を介し産生されるPG類が炎症・疼痛応答を協調的に促進することが示唆された。 4)化学発がん:アゾキシメタン投与による大腸化学発がんは、mPGES-1 KOマウスで抑制されたのに対し、PGIS KOマウスでは逆に促進された。また、WKOマウスではその中間の表現型を示した。発がんに関しては、mPGES-1とPGISを介し産生されるPG類が逆の作用を示すことが明らかとなった。 5)shunting現象:各KOマウスの腎臓、肝臓、肺といった組織を用い、shunting現象(KOされた酵素とは異なる別のPG類の産生が増加する現象)について検討したところ、組織によりshuntingのされ方が異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PG最終合成酵素mPGES-1、PGISの単独KOマウスならびにWKOマウスの表現型の解析を通じ、生命応答制御におけるPG最終合成酵素間のクロストークについて、多くの新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
mPGES-1、PGISの単独KOマウスならびにWKOマウスの表現型の解析をさらに進めるとともに、他の最終合成酵素の単独KOマウスやKOマウスについても導入あるいは作製を行い、これらについても解析を開始する。また、マウスを用いた解析を通じ得られた知見とヒト疾患との関連についても解析を行う。
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